珍しい反応に
「なんか可愛いねー、夢野さんって」

「……はぁ、そうですか?」

ニコニコと掴み所のない笑顔で、滝さんが日吉に話しかけている。
正反対に日吉の顔は見るからに不機嫌そうだった。

よく耳を傾けたら、奇跡の少女──夢野さんの話みたいだ。

どうやら、滝さんは彼女と会話をしてきたらしい。

「ジローと仲がいいみたいだけど」

「…………意味が分かりません。その話を俺にしてどうするんですか。練習に集中したいので、もう話しかけないでくれますかね」

ひ、日吉……!

まさか日吉が滝さんにそんな言い方をするとは思わず、酷く動揺した。
向日さんや忍足さんならともかく、だ。


「どわっ?!おい、長太郎っ!サーブの軌道どうにかしろよ!」

「うわ!すみません、宍戸さんっっ」

意識を戻して、宍戸さんに頭を下げる。

もう既に滝さんと日吉は別々の練習メニューをこなしていた。



「クソクソ夢野詩織め、ぜってぇ身長伸ばすっ今に見てろ」

「樺地〜、試合しよー!詩織ちゃんにカッコEーとこ見せるC〜」

「……はぁ、あかん。小動物には優しいしなあかんのはわかっとるんやけど、なんか夢野さんの顔見たら意地悪したくなるんやもんなぁ」

「………………ちっ」

その日、先輩たちの口から夢野さんの名前が出る度に日吉の集中が途切れたのを俺は目撃してしまった。

そして毎回滝さんがクスクス笑っているのも。


…………夢野詩織さんって、一体どんな人なんだろう。

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