不思議な子
──樺地がジローを迎えに屋上へ向かおうとしていたから、同行することにした。

何故かというと、部室にあった双眼鏡で屋上を見ちゃったからなんだよねー。

屋上には確かにジローがいて、あの子の姿もあった。

そう、夢野詩織さん。

実はつい先日、ジローがやたら彼女の名前を口にしたのだ。
そこから、最近話題になっている謎のヴァイオリンの主も彼女であることがわかった。

景吾くんと榊監督が話していたんだけど、彼女がよく弾いている曲は、パガニーニのカプリース(24の奇想曲)というヴァイオリン独奏曲らしい。二人がいうには、とても技巧的な難曲で、オーケストラ部の子たちもそのレベルの差に驚いているということだ。

そして俺が一番気になっていること。

それは最近の日吉。

こっちの変化のきっかけも、彼女だと思うんだよねー。





──…………

「……やるねー」

「ウス」

屋上について、まず耳に入った音楽に感心した。

クラシックはあまり知らないし、ヴァイオリンに特別興味を持ったことはない。
だけど、その時確かに俺は感動したんだろう。


「……っ、ほら!芥川先輩っ、樺地くんがお迎えに来てくれましたよっ」

「……え〜」

「…………、ジロー先輩っ、ここで見てますから、カッコいい練習風景を見せてくださいっ」

「っ、うんっ!マジマジ見ててね!詩織ちゃん、絶対だよっ」

名前で呼ばれたジローは、一転して明るく笑い始めた。

へぇ、これは面白いねー。

とりあえず、彼女に自己紹介をしてみることにした。

「滝萩之介だよ。ジローが世話をかけてごめんね」

「っ、夢野詩織です。…………うわぁ、綺麗な人だ。女の人かと……」

「ふふ、ありがとう」

噂通りの彼女に微笑めば、口を開けたまま固まっていた。

わぁ、太巻き放り込みたい。

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