「岳人には企業秘密や。せやから、ついてきたらあかんで」
「クソクソ侑士っ!んなこと言われて納得するかよ!」
侑士がしっしっと犬を追い払うみたいに手を動かすので、意地でもついて行くことにした。
侑士はそれ以上は何も言わない。
そういやぁ、こいつ昼休みの後も一人でどっかいってたよな。
そんなことを考えながらついて行けば、いつの間にか人気のない裏庭に来ていた。
「うげ」
ついそんな声が出ちまう。
だってここは、よく告白する奴らが利用している場所だ。
侑士はよく呼び出されてるから、もしかしたら今回もそれなのか。
だったら付いて来るんじゃなかったぜ。
「……岳人、ちゃうで。呼び出したんは、俺の方や」
既につっ立っている女子を見て顔を歪ませた俺に、侑士は信じられないことを言ってきた。
「は?今なんて」
「……しのびあしさんって、丸眼鏡の先輩だったんですか」
俺が全部を口にする前に、女子がそう言う。
……ん?あれ?こいつ、どっかで見たことあるような。
「しのびあしちゃうよ。忍足や。おしたり。……まぁ、昼休みの時は悪かったなぁ。ただ謝りたかったんよ」
「……そうですか。いえ、先輩が悪いわけじゃありません。モテるのは先輩のせいじゃありませんから」
友達に聞きました。と続けた女子を見ようと、侑士の後ろでぴょんぴょんと跳ねていたら、そいつと目があった。
「ところで、あの時私を呼び止めた理由は…………うわ、なんだあの小さい子!可愛い、うさぎさんみたい!可愛い!!」
「っ、誰がチビだ!可愛い言うなっ」
「……夢野さんは、チビ言うてないで。小さい言うたんや」
「同じだろ!」
ギッと侑士を睨む。
つーか、侑士を先輩つってたんだから、こいつ、俺より年下なんだろ?!
「ふぁあっ、ごめんなさい!つい……じゃなくて、せ、先輩、ごめんなさい。…………間近でみたら女の子みたいだ……」
「お前、謝る気あんのか?!くそくそ、馬鹿にしやがって……っ!」
「はっ!また口から出してた?!ご、ごめんなさいーっ」
「侑士っ!もう俺戻るからなっ!!」
「岳人、ちょお待ち……」
そんな侑士の呼び止める声が聞こえたが、腹が立っていた俺は無視した。
……夢野詩織
あいつが、先週の学食で跡部と対峙してた転入生だと気付いたのは、部室についてからだ。
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