「あぁ、物作るのに汗はかいたしな」
白石の返事にねーちゃんは「やっぱり……」と何故かワイを見てた。
「金ちゃん、かむかむ」
「え?何か噛むん?」
「違うよ。ちょっとおいでってこと」
手招きまでしてくれたねーちゃんに近づくと、がばっと目の前が真っ暗になる。
「な、なんや?!」
「大人しくする!通りでさっきから、金ちゃん跳ねる度に水滴が飛んでくるわけだよ……もう、ほら、暴れない!!」
どうやらワイの頭がびしょ濡れやったんが気になったらしい。
そんなんいうても、こんな暑いねんから、すぐ乾くと思うねんけど……
でも、ねーちゃんの手が気持ちよくて。
そしてどっかちょっとくすぐったかった。
なんやふわふわした気持ちや。
たこ焼きの中の生地みたいな。
「……で、なんであそこでエクスタシーなんすか。俺への嫌がらせですか?」
「ざ、財前、俺も心の傷があれやからあれせんといて?」
「何が心の傷や。ふざけんなや」
ワイの髪を拭ってくれた後「よくみたら皆さん(石田さんと小春お姉様以外!)濡れてる!」と叫んだねーちゃんに、みんな順々に頭を拭いてもらってん。
で、最後が光やったんやけど、その前に白石で。
拭いてもらってた白石がいつもの台詞を吐いたら、ねーちゃんは無言で小屋の扉を閉めて中から鍵をかけた。
ほんま早業やった。
「あーもう、マジ聖書最悪っすわ。性書の間違いやわほんま」
「すまん、白石。……俺にもフォローでけへんわ」
「ケン坊まで……っ!」
白石はその夜暫く部屋の隅で三角座りしとった。
銀さんと謙也が触れたらあかんといっとったから、先に寝た。
窓から見えた星空がめっちゃ綺麗で。
なんやねーちゃんの夢を見そうな予感がしたんや。
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