「深司くんがひどい?!」
なんかわけのわからない家族妄想とやらを繰り広げている詩織にそういったら、すごくショックな顔をされた。
「っていうか。同じような年齢なのに家族妄想する方がおかしいだろ。いやまぁ……跡部さんや真田さんは納得だけども」
神尾の台詞を聞きながら、それもあるけどなんかムカつくんだよね。とも小さく思う。
「確かに不動峰の皆は困るよね。同年代って感じしかしないもん。まぁ橘さんはお父さんっぽくて、鉄くんと森くんと桜井くんはお兄ちゃんって感じはする」
「石田と森と桜井が兄なのに俺は?!」
「なんか内村くんは弟っぽい」
「嫌だ!!」
全力で否定した内村に「なんで?!」とまた声をあげた詩織にこそなんでと返したい。
いや本当に……なんなんだろう。あぁ、腹が立つなぁ。
「……っていうか、何?まさか俺と神尾も年下扱いする気なんじゃないよね?そうだとしたら、詩織のこめかみぐりぐりしようかな……いいよね、自尊心傷付けられるわけだし」
「だ、大丈夫!深司くんは双子で!神尾くんは弟!」
「ふざけんな!!」
神尾が詩織の後頭部目掛けてチョップした。
……俺は双子だと言われたのでちょっと黙る。
ほら、これで氷帝の日吉や四天宝寺の財前と一緒の扱いなわけだし。
「もういいじゃん。お前ら三つ子で」
言い合いをしている神尾と詩織が煩かったのか、収拾がつかないと判断したのかわからないけど、石田が笑いながらそう言った。
「……神尾までいらないんだけど」
「こ、このバカと三つ子もなんか嫌だ!!」
「じゃあ、俺と代われ!」
「内村うるさい!」
「神尾くんがうるさい!」
内村まで混ざってわぁわぁ騒がしくなった。
森と桜井はなんか爆笑してる。
石田がオロオロとし始めたら、今まで黙っていた橘さんがダンッと木のテーブルを叩いた。
「お前たち、少しは静かにしないか」
「「はいっ!」」
その瞬間に誰も何も発言しなくなって、他校のやつらにはちょっとニヤニヤされてた。
……特に財前の視線が異様にムカついた。
「…………わ、わかった。駆け込み寺だ。橘さんは僧というかもはや仏様というか。鉄くんが修行僧。私たちはお世話になってる小僧たちです」
「「夢野、ちょっとお前黙れ」」
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