「え?それだけ?!」
サエの驚いた顔に夢野は小さく「うー……」と唸っていた。じりじりとサエから距離を置いていく様子から、はやりどこか苦手意識があるらしい。
……サエはモテるから、こんなに女の子に避けられてるのは初めてだ。
「……サエさんナンバーワンホストですね!」
「え?ごめん、いきなり話がわからないや」
「ナンバーツーが天根くんで、ナンバースリーが木更津亮さんかな……」
「家族妄想どこいった」
バネがつっこむと、夢野は容赦ない!と嘆きつつ「バネさんは黒服の人!追い出す人!」と大声でいった。
まぁそれより、ナンバースリーのホストって位置的にどうなんだろうか。
いいんだろうか……なんて悩む。
「首藤さんはお笑い担当で、ヘルプ的なホストさんです」
「なんでだ」
……あ、首藤の位置だけは嫌だな。うん。
「じゃあ僕はなんなのね〜?」
「樹さんはウェイター!!むしろバーテンダー!!」
「かっこいいのね〜!」
鼻息荒くなったいっちゃんの横で今度は剣太郎が跳ねてた。
「あの、あの、僕はっ?!」
「ウェイター見習い!!」
「くっ、頑張って貴女を指名できるよう頑張りますっ!!」
「え」
「クスクス、家族妄想も混じると六角はホスト家族みたいだから、そうなると夢野もホステスってことだね」
「なんですと?!」
俺が笑ったら彼女は目を白黒させる。
サエが「じゃあ指名料はすごく高くしないとね」とウィンクしたら「ぎゃー!」と真っ赤になって何故か首藤の脇腹を殴ってた。
……相変わらず面白い子だ。
「……クスッ、じゃあさっきの世界観繋げたままだと、僕、王子だから指名できるかな?」
「な……」
驚いた。
いきなり淳が俺の目の前で、夢野を後ろから抱き締めたから。
「ね?亮?」
そう目を細めた淳は俺の反応を楽しんでいるようだったが、一番大事なことを忘れている。
「ねぇ、そこの王子さ。姫様ならこっちじゃない?」
「せやからその馴れ馴れしい手どけてくれへん?」
青学の越前と氷帝の忍足が、ぺしりっと淳の手を、硬直して石になっている夢野から引き剥がした。
それから淳の前にずいっと誰かを押し出す。
「……フフ、五感も奪ってあげるね」
「っ」
その時の幸村の顔はさすが王者立海大部長というか。
いやもう本当に心底恐ろしかった。
……幸村の姫を選ぶくらいなら、不二裕太のシンデレラを選んだ方がましだ。
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