大声で金太郎さんが詩織ちゃんを呼び止める。
もう夕食も終わったのに、詩織ちゃんの家族設定に聞き耳をたてる皆が可愛かった。
ユウくんは最初イライラしとったけど、青学の乾くんを犬扱いしたお笑いのセンスを気に入ったらしく「どんどんハードルが上がっていくもんや!これは見物やで!」と詩織ちゃんに期待し始めたらしい。
でも若干顔をひきつらせてる詩織ちゃんは絶対笑いを取るつもりとかはなかったんやろう。
だって詩織ちゃん、天然の小心者やもの。
あかん、見てるこっちがハラハラしちゃうわぁ☆
「えーと……金ちゃんは間違いなく弟だよー。お父さんは……」
「……俺か」
「小石川さんしかいない気がしました」
「銀さんおるやろ」
「銀さんはお祖父様です。むしろ組長です」
「え?!極道一家?!」
ケンちゃんのツッコミが普通やった。
あかん、あかんよ、ケンちゃん!ここはもっと違う角度からつっこまな!!
「ぬぅ……そんなイメージか……」
大きな背中を丸めてちょっと遠い目をし始めた銀さんはおいといて「弟やってー!」と笑っている金太郎さんの後ろから謙也くんと蔵リンが顔を覗かせてそわそわし始めとった。
「……白石さんは毒手で暗殺専門。謙也さんはそのスピードを活かして鉄砲玉あたりですかね」
「「あれ?!家族設定は?!」」
「まぁ冗談は置いといて、お二人ともお兄ちゃんだと思います。そして小春お姉さまとその婚約者の一氏お兄さま」
「わかっとるやんけ!」
「こんな可愛い妹欲しかったんよぉ」
ユウくんと二人で詩織ちゃんの頭を撫でたりして愛でる。
なんやお兄ちゃん言われて浮かれとる蔵リンと、謙也くんは見えへんかったことにした。
そしたらそんな二人の踝を蹴ってから、光くんが詩織ちゃんの腕をつかむ。
「……俺は?」
まるで凄んでるようなそれに思わずアタシの胸がきゅんっと高鳴る。
な、なんやの?!皆のみとる前で……っ、きゃー!!
「……おと──」
「しばくで?」
「えぇ?!でも、お兄ちゃんじゃないしなぁ……」
「なら一つしかないやろ?」
「………ふ、双子?」
詩織ちゃんが首をかしげると光くんは満足そうに目を細めた。
あぁっ、これはあれやね?!
あの氷帝の日吉くんへの挑戦状やわ!
ばちばちと見えへん火花が二人の間に散ったのを見てしもうたわ。
なんやの!
ドキドキ展開やないのぉー!!
とりあえずくっついてくるユウくんを殴ってから、アタシはもううっとりとこの展開に酔うしかなかった。
つーか、蔵リンと謙也くんの入る隙間あるんやろうか!はよしな詩織ちゃんが取られるで!
「……俺はなんね?」
「隣の森にすむ不思議な妖精」
「どんぐりあげるばい」
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