家族妄想in青学
「よし、面白い。次はうちが受けてたとう」

「な、何を言い出すんだ。乾っ!」

殆んどのメンバーが夕食を食べ終わり始めた頃、ノートにペンを走らせていた乾が眼鏡を光らせた。

あぁ……どうしよう。
胃が痛い。
あまり聞きたくない……。

「さぁ、夢野!どんとこい」

「乾さんが何故そこまで自信満々なのかわかんないんですけど……。とりあえず、青学のみんなだと、やはりパパは手塚さんだと思うんです」

「……そうか」

無表情で頷いた手塚の真意はまったくわからなかったけれど、そのあとにちらりと夢野さんが俺を見ていたので、なんとなく彼女の言いたいことがわかった。

「はは、その顔は俺を母親にしたいんだね」
「やだ大石さん、私の気持ちが!」
「……うん、わかったよ」

微妙な気持ちになる。
まぁ自分のたち位置は理解しているつもりだから、そうだろうなと思っていたけど。
ちょっと、というか、やっぱりショックだよね。
まぁ悪い意味ではないんだろうけど。

「夢野ちゃん、夢野ちゃん、俺は〜?」

「もちろん、お兄ちゃんです!」

英二がピースしたところで、氷帝の向日が泣きながらどっかに走っていった。
かなりショックだったんだろう。

「薫ちゃんも桃ちゃんもお兄ちゃんかなー」

「……ふしゅうぅ、じゃなきゃ訴えるところだ」

「はは!確かに!」

「な、なんだとー?!」

この三人は相変わらず仲がいいなぁと思う。
先生たちとはまだ合流できていない状況だが、気持ちが塞ぎこまないのは、夢野さんや桃たちのおかげかもしれないな。

「フフ、タカさんと僕はなにかな?」
「……ふ、不二、俺は別にいいのに」

「やだ、河村さんもお兄さんですよ!そして不二さんがお姉ちゃん……ごめんなさい、目を見開かないでくださいお兄様!」

「フフ、お兄ちゃんだらけだね」

「大丈夫です。リョーマくんは誰が見ても完璧な弟像ですから。ツンデレ弟ひゅーひゅー」

「ちょっと。詩織センパイにそう言われるのめちゃくちゃ不愉快なんだけど。しかもツンデレって何。俺がいつ詩織センパイにでれたわけ」

唇を尖らせている越前はものすごく不服そうだったが、そんな越前が面白いのか夢野さんは越前の頭を撫で始めた。

「ひょほほほ、リョーマくんが怒っても怖くないもんねー」
「その笑い方すごくムカつくんだけど」
「ひょほほほほ」
「なんなの、病気なの、バカなの?あ、バカだったね」
「な、何をー!!」
「ふん、まだまだだね」

ニヤリと越前に笑われて夢野さんは「ガッデム!!」と叫んでいた。
……夢野さんは本当に誰とでも仲良くなれるんだな。
羨ましいというよりも、少し心配になる。

「……夢野。大切なことを忘れていないか。俺はどうなんだ?」

「さだはる、ハウス」

怪しく眼鏡を光らせた乾を見ずに夢野さんはそう言った。

その瞬間にざわりと辺りがざわつく。

あぁ、犬扱いするとは想わなかったな、と思ったんだが、どうやら俺と周囲は違う感想だったらしい。

「詩織ちゃん、俺、詩織ちゃんのペット扱いでええから。間男よりペットがええから、ちょっと命令してくれへん?」
「何故わざわざ貞治を名前で呼ぶ!」
「……ふむ、今日は名前で呼ばれた記念日だな」

忍足は本当にそれでいいのだろうか。
そして柳は最近どこに向かうつもりなのか。
あと、喜ぶのかよ。と乾にツッコミをいれるのに、めちゃくちゃ胃が痛くなってたまらなかった。

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