丘の上のマーメイド
「ふわぁぁ、どこから出たのこのティーセット?!ねぇ樺地えもん!!」

「……う、ウス」

「フフ、それを言うなら、跡部えもんじゃない?」

「おい、不二。俺様を巻き込むな」

見晴らしのいい丘に上ってレジャーシートを広げての紅茶タイム。
素敵すぎるティーセットに混乱して声をあげたら、樺地くんは困り顔の上、会話に混ざってくださった不二さんの優しさもつかの間、跡部様には冷たくあしらわれた。

「まぁまぁ。ほら紅茶でも飲んで」

滝先輩の穏やかな笑顔に癒されながら、手渡された紅茶を口にする。

今この丘の上にいるのは、私と跡部様と樺地くん、滝先輩、若くん、忍足先輩、不二さん、幸村さん、柳さん、柳生さん、佐伯さん、観月さんのメンバーである。

「はい、日吉も」

「ありがとうございます」

私同様滝先輩からティーカップを受け取った若くんに少しだけニヤニヤしてしまった。
だって若くんと紅茶は似合わない。
幸村さんの後ろに座ってノート広げてる柳さんと同じく若くんもどちらかというと緑茶だ。
むしろ和服がいい。
というか茶器で抹茶を淹れて欲しい。

「……お前茶道の手順とか知らないだろ」

ぺちんっと額を叩かれた。
若くんエスパー!ではなく、私がまた口に出していただけだった。
くそう、いつか若くんに「……お前は常識的な人間だったんだな。誤解していた。すまない」と謝罪させてやる。

「「……無理だな(ね)」」

その場にいたほぼ全員(樺地くんと柳生さん以外)に即答されて発狂しかけた。
あまりの悔しさに隣にいた忍足先輩の横脇腹をぐさっと手でついたら、突然すぎたのか、元々弱いのか知らないけど、蒟蒻みたいに身体をくねらせていて、ちょっと面白かった。


「でも、このメンバーってのは、珍しいね」

「確かに。佐伯もついてくるとは思わなかったよ。六角はいつも全員一緒か数人一緒に行動してるイメージだし」

佐伯さんが爽やかに笑ったら不二さんが、私の様子を見ながらそう答える。
たぶん、私が佐伯さんを警戒しているように見えるのが面白いらしい。

「それを言うなら、観月も珍しいだろ?」

苦笑しながら佐伯さんが自分から観月さんへと話題をシフトチェンジする。

「んふっ。まぁ……跡部君のお誘いですからね」

「アーン?いや観月。お前は勝手に着いてきたんだろ」

「んふっ、それにしても夢野さんもご一緒だとは……嬉しい誤算ですねぇ」

跡部様のつっこみを華麗にスルーされた観月さんのハートは鋼で出来ているか何かだと思う。

「わ、私のことなどお構い無く」

へらっと笑ってみたら、観月さんがいつもの「んふっ」笑いをされた。
この間のハンドクリームの件もあって、またその含み笑いに心臓がばくばくする。

「……夢野さん?大丈夫ですか?」

そんな私に気付いたのか、柳生さんが首をかしげていた。光を反射する眼鏡の奥には真剣に心配してくださっている瞳があるに違いない。
何故ならば柳生さんは紳士なのである。

「夢野さん、気分が悪いならどこか日陰で休むかい?」

そう続けてくださったのは幸村さんだった。

「だ、大丈夫ですよ!むしろ幸村さんの方こそ大丈夫ですか?!」

「フフ、俺は大丈夫だよ」

女神のように柔らかい笑みを浮かべてくださった幸村さんは本当に美人だった。
さっきテニスコートが出来上がった後に気分悪そうにしていたけれど、今はもう平気みたいだ。

「……いたひ」

そして何故だろうか。
何故私は若くんに頬をむにっとされているのだろうか。

「若くん若くん、なんの真似だね」

「いや?特に意味はない」

意味なく人の頬をむにむにっと弄る人はいない。いや目の前の人がそうなのかもしれないが、とんだ迷惑な話だ。

「クスッ、日吉はそろそろ昔の俺にご褒美をくれなきゃね〜」

「なに言い出すんですか?意味がわかりません」

「わからなくないでしょ?ほら、助言や忠告の数々を思い出してごらん」

「滝さん、正直忍足さんよりウザいです」


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