一時休戦
「よし、ここはチーム戦にしましょう!」
「「は?」」


山菜や果物採集を目的に山道を歩いていたら、突然夢野が叫んできた。相変わらず突拍子もないことをいうやつだ。

さっきまで口喧嘩していた相手である桃城もぽかんとした表情で夢野を見つめている。

「クスクス、本当に面白いね、君」
「だな、淳」

木更津さんたちが夢野の頭を左右から交互に撫でて、あいつは真っ赤になって避けようとしたのか変な動きをした後見事に転んだ。スカートが見事に捲れている。

「…………い、苺」
「っ、ダビデぇっ!」
「ぐはっ」

天根のぼそっとした呟きに、カァッと血の気が上るのを感じながら瞬間的に夢野から顔を逸らす。
後ろで黒羽さんが天根に打撃をくらわせているような音が聞こえていた。
ふっと視線を動かすと、俺と同じように夢野から顔を逸らしている桃城と目が合う。

「……ふしゅー、おい、桃城。あ、あいつは立ち上がったか……」
「た、たぶん……」

桃城と息を吐き出して、呼吸を整えてから夢野を見た。
ちょうど田仁志さんの手を借りて起きあがっているところだ。

「「クスクス」」

木更津さんたちが意味深に俺たちを見ながら笑っている。……異様に不愉快だった。


「……き、気を取り直して!二人一組みのチーム戦いきましょう!一番多く果物とか集めるのは私ですぜ!ささ、田仁志さん!ダッシュ!」
「ぶぉ、わんか?!」

「おぉ?!ダビデ、行くぞ!」
「チーム戦でち──」
「うるせぇ!!」

いきなり田仁志さんの腕を引っぱり、走り出した夢野を追うように黒羽さんたちも山道を駆け上がる。

「……じゃ、亮行くよ」
「あぁ。少なくともすぐ喧嘩するやつらには負けないけどな」

俺たちの前をいく木更津さんたちの台詞にぴくりと身体を硬直させた。
ふしゅうぅっと長く息を吐き出す。

「負けてらんねぇーなぁ、負けてらんねぇーよ」
「……わかってんな、てめぇ」

腕をぐるんぐるんと回し始めた桃城と視線を合わせた。
今ならこいつの考えてることが手に取るようにわかる。


「「絶対負けねぇ」」


テニスの試合でもなんでもねぇ。
それはわかっている。
だから普通なら桃城なんかと手を組んだりはしねぇ。
……だが、あいつが

夢野がいきなり二人一組でチーム戦などと言い出したか理由がわかっちまったんだ。

……本当に、よくわかんねぇ上に恥ずかしくてお節介で煩い変な女。

でも、不思議と嫌いじゃねぇ。
むしろ──



浮かんだ台詞は頭を振ってかき消した。

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