安心の桃ちゃん
「白石さん怖い、えくすたしらいしーさん怖い……」

ぶつぶつお経のように呟いていることにも気付かないまま、私は私の中では黙々と昼食を平らげた。

「……全然黙々じゃねぇし」

岳人先輩が呆れた顔をしているけど気にしていられない。
だってもう、私の中の苦手ランク飛び越えて怖い人ランクに白石さんが王座を獲得された。マジもう嫌だ。
温泉に浸かってるんるん気分だったのに、本当になんなんだろうか。白石さんは何故私の匂いを嗅いでえくすたしーになったの。やだ、なんか、やだ。恥ずかしい!




私は午後からの作業を手伝わせていただいた上で、私を癒してくれるような人を探した。
一番始めに若くんや十次くんについていこうと思ったんだけども、二人が白石さんと同じ班だったので諦めた。
白石さんは勿論だが、佐伯さんや柳さんや乾さんや観月さんのお手伝いも避けたい。
あと、今のこの心境では葵くんや千石さんや忍足先輩、幸村さん、リョーマくんも耐えられる自信がない。なんかめちゃくちゃ意識してしまう。
私、今更だけど、男の子ばかりの中に女一人なんだって、改めて気づいたからだ。

「流夏ちゃん、助けてぇ……っ」

ぐすぐすと涙が出てきてしまう。情けない。でもなんか恥ずかしくてたまらないから仕方がない。

「……おーい、夢野。大丈夫かぁ?」
「……ふしゅうぅ」

目元をごしごし手の甲で拭ってから顔を上げたら、白い歯が眩しい桃ちゃんと相変わらずふしゅうふしゅうぅしている薫ちゃんだった。

「ちょっと待て、ふしゅうふしゅうぅしてるってなんだおい」

薫ちゃんが顔を歪ませたことに、私と桃ちゃんも大袈裟に驚いてみせた。

「よし、このノリだ!」
「おう!」

両手を上げたら、桃ちゃんはハイタッチしてくれる。おおう、手がじんじんする。痛い。容赦ない。でもやっぱり桃ちゃんは素敵だ!

「なんだかわかんねぇけど、元気出たみたいだな!やっぱ夢野はそうじゃねぇといけねーなぁ、いけねーよ」

「…………ふん」

桃ちゃんの台詞にへらっと笑い返してから、薫ちゃんの後ろを確認する。
天根くんとバネさん、それから木更津亮さんと淳さんが今回一緒の食料採集班らしい。あ、あと、珍しい。比嘉の田仁志さんも一緒なんだ。

「あー、なんか田仁志さん。午前中に美味そうな果物なってる木を見つけたんだってさ。だから比嘉の人らと別行動らしいぜ」

「なるほど食欲ですか納得」
「納豆食って納得……ぷっ」
「ダビデぇえっ!つまんねぇんだよ!!」

桃ちゃんの台詞に頷いていたら、バネさんの盛大なツッコミが天根くんを襲ったのだった。

……うん、このノリ心地いい。天国である。

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