「…………」
そして俺の大切な後輩の様子がおかしくなったのも確かそう、あの出会いからで。
今も比嘉の田仁志とバナナを集めている夢野に視線を向けているダビデに小さく息を吐いた。
ダビデは変なやつだと思う。
はっきりいって、あの寒いおやじギャグはどうにかした方がいい。
俺が卒業した後、アイツにツッコミいれるやつがいるのか不安だ。放置プレイはやつのつまんねぇギャグを野放しにするのと一緒だから、その状況を考えるだけでダビデのぼーっとした顔を今殴りたくなる。
手を動かして山菜を集めながら、もう一度ダビデを見た。
山菜を摘みながら「山菜を三歳児が食べる……ぷっ」と呟いていたので、跳び蹴りしておいた。
「ふふふ」
その後、青学の桃城と海堂が木更津兄弟や俺たちを追い抜くすごい勢いで採集をしているのをほくそ笑んでみている夢野に気付いた。
悪そうな顔だが、あれは嬉しそうにニヤニヤしている顔なんだろう。
「……」
その夢野をまたダビデが盗み見て、小さく息を吐いているのも目撃した。
あー……と、俺はがりがりと頭をかく。
夢野は口喧嘩していた桃城と海堂をどうにか仲良くさせようとチーム戦を提案したらしい。
また話が戻るが、ダビデは変なやつだ。
だけど俺の大切な後輩だ。そしていいやつである。
そんなダビデの様子がおかしいのだ。
先輩として、ここは何かダビデに協力すべきではないだろうか。
「なぁ!夢野!」
「ふぉ?!な、なんですか?!」
俺の呼びかけに驚いたらしい夢野はぼたぼたと果物を地面に落とす。
「……ダビデの名前覚えているか?苗字じゃなくて名前な」
ダビデが決まって様子がおかしくなる瞬間を思い出して、そう呟くようにいった。
いつも夢野が四天宝寺の財前の名前を呼ぶとき、ダビデはなんとも言えない表情をするのだ。
「え……ヒカルくん、ですよね?」
「……う」
夢野が名前を口にした瞬間、ダビデがばっと顔を上げて困ったような表情を浮かべた。だが俺にはわかる。ダビデ、お前は照れてるんだろ?!
「……バネさん、それは……夢野がややっこしいと思う……」
でも、とダビデは真面目な顔をして俺の耳元ではっきりと続けた。
「……ヒカルが二人で、ふたひかる……蓋光る……ぷっ」
「ダビデぇー!!」
……もしかして、この馬鹿は夢野を見ながらおやじギャグを考えていただけなんだろうか。
むしろ夢野のことを好きなんじゃないかと思ったのは、ただの俺の勘違いで、おやじギャグを言う仲間かライバルだと思っているだけだとか。
「わ、私も負けない!!バネさん、ネバネバ!」
「誰がネバネバだ!」
ひとまず、ダビデと夢野にチョップしたのだった。
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