「……詩織、心の驚きがだだ漏れ」
引ったくりからリュックを取り返したお礼にと、何故か喫茶店に連れ込まれた。
否、俺は気にすんなって遠慮したんだぜ?だけど、血眼──げふんげふん、必死にお願いされたら断れなかったのだ。
だから何故か海堂と並んで座っている。
「……なんでてめぇとこんなとこに」
「そりゃこっちの台詞だぜ、マムシ」
「あぁ?!」
「なんだよっ?!」
ついいつものように言い合いを始めたら、じぃっと視線を感じた。
否、前の二人からなわけだけどよ。
「……二人は仲がいいんだねっ」
「「よくねぇ!」」
ニコニコ笑ってるパンダのリュックの子に返せば、それは海堂と重なっていた。
くそっ、こんなときばっかタイミング合いやがって……!
「……私は三船流夏。こっちは夢野詩織。とりあえず名前だけでも自己紹介しておきましょうか」
溜め息をつきながら、ショートカットの方がそう言った。確かにそれもそうか。
「……俺は桃城武。桃ちゃんでいいぜ?」
「……海堂、薫だ」
「桃ちゃんに薫ちゃんだね!よろしくです」
「ぶっ!」
夢野って方の台詞に今度は吹いてしまう。
「……桃城、てめぇ」
横に視線を向けたら、海堂が思いっきり睨んできていたが、知らねぇふりをした。
「二人とも、好きなもの食べてね!お礼だから!……うわ、パフェ美味しそう。でもお礼優先だよ、詩織。手持ちには限界があるんだから……っ」
「……詩織。貴女の分は私が出すから、パフェ食べたいなら頼みなさい」
「え、流夏ちゃんエスパー?!」
「……否、夢野、口に出してたぜ?」
俺がそう呟いたら、夢野は一気に赤面した後、テーブルの上に額をガンっと強く打った。
どれくらい強くかというと、海堂が「だ、大丈夫か、アンタ……」と心配するぐらいだ。
なんか変わったヤツだけど、面白ぇのな。
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