そろそろ気持ち悪い
朝、目覚めた瞬間、私は自分の汗臭さに気付いた。

「……ダメだ、これはいけないと思う、なんかもう下着も気持ち悪い」

洗濯したい。
熱い風呂に入りたい。いや、もう熱いとかワガママ言わないから、滝か湖かなんかに飛び込んじゃダメかな。
そして本当に洗濯したい。あと、さっきの飛び込みたいと言った滝は、自然の滝のことです。滝先輩のことじゃないですぜ、念のため!

「……あはー、訂正しなくてもわかるよー」

朝食を食べている滝先輩が私に笑顔を向けてくださるが「……そうやな、……着替えないんやったな」と無表情でマジマジと私を凝視してくる忍足先輩が怖かった。
何か寒気がする。

「……全身洗濯したい!」

「わかったから、黙って食え。朝から騒がしいやつだな……」

跡部様に怒られたので、その後黙々と朝食を食べた。
食べ終わって片付けをしていた頃に樺地くんが小瓶をくれて、中身はどうやら香水である。
なんで樺地くんが香水の瓶を持ってたんだろうと思いつつ、お礼を言って少し手首につけてみたら跡部様の匂いがした。いやたぶん間違いなくこれは跡部様の香りである。……なんか少し恥ずかしくて、でもちょっぴり嬉しかった。
お礼を言おうとしたら、今日の作業の班分けが始まってしまう。跡部様忙しそうだから後にしようと思ったら、忍足先輩に「……詩織ちゃん、自分……跡部くさい」という衝撃の発言をされてしまった。
少しだったのが異様に恥ずかしくなってしまった。

跡部様、ごめんなさい。ありがとうございました。でも、なんか私には跡部様の高貴な香りは似合わないというか……!と口に出しそうになったのをぐっとこらえた。
樺地くん経由で渡してくれた跡部様は、きっと気を使ってくれたんだ。なのに今返したら跡部様に恥をかかせてしまうことになるんじゃないだろうか。なんというか、失礼な気がする。


「……わ、私、跡部様大好きで尊敬のし過ぎから、汗の分泌を制御し体臭をも変化させてみせたのですっんぎゃ?!」

後頭部を叩かれたので顔を上げたら無言のまま私を睨んでいる若くんだった。
忍足先輩は笑い出すし、宍戸先輩には気持ち悪いものを見るような目で見られている。辛い。

「……っ、とりあえず、各自気をつけろよ。アーン?」
「……あ、あぁ。油断せずに行こう」

みんなの前に立つ跡部様と手塚さんが呆れたような声でそう言い、今日の班分けは終わった。



「あかん。跡部と手塚くんのあの顔見たか、謙也?」
「……鳩が豆鉄砲食らった感じやったな。……そやけど、夢野さんはそ、その」
「あー。大丈夫や。今んところは、俺が見とる限り、跡部は親みたいな感じに思われとるだけやから」
「…………侑士、お前は変態やけどな」
「うっさいわ……」

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