無表情のまま、永四郎はそう言い放った。
冷たい声音と視線に、夢野への圧力を感じる。
「……っ、ではなぜこんな時間に──」
「仲間同士、集まって何が悪いんですかね」
「──っ……」
永四郎の言葉に言い返せないことが悔しいのか、夢野は泣きそうな表情をしていた。
「……永四郎、もうやめるさー」
裕次郎が頭をかきながら間に入る。
泣かれたらかなわんと思ったに違いない。
だけど、その後わったーは予想を裏切られることになった。
「……信じてください」
「やーは」
くんぐとぅ妙な気分を感じたのは初めてだった。
隣に立つぐなぁいなぐがまるでまぎー存在に見える。
「しかぼーのくせに……」
くっと喉を鳴らして呟いた。
永四郎や寛がわんを不思議そうに、ちらりと視線を向けてきたのもわかった。
「……話が見えませんね。いきなり信じてくださいだなんて」
「皆さんが……跡部様に不信感を抱いていることは知っています。確かにこの合宿はおかしなことがたくさんあって……でも、だからこそ、信じてもらえませんか」
「……だから一体何を?」
「見えない部分が悪意あるものじゃないってことをです!」
真っ直ぐな瞳が永四郎に向けられていた。
「……それは跡部に隠し事があるってこと、認めてることになるさー」
「はい!そうなります!!」
まさかそこまで元気よく返事するとは思ってなかった。
聞いた寛ですら目を見開けて、その後大声で笑う。
「……その隠し事に悪意がないという根拠はありますか?」
永四郎も少し表情を崩されていた。呆れたような溜め息をつきながら、ずれた眼鏡を元の位置に戻す。
「ないです!ただ、私が跡部様はそんなことしないと信じているからです!」
にへらっと笑った夢野は本当に眩しいくらいで。
わんは一気に全身の力が抜けたのを感じた。裕次郎や慧くんもその場にへなへなと座り込む。あーいや、慧くんはやーさいだけかもしれない。
「……はぁ。話になりませんね。行きますよ」
「木手さ──」
「貴女も早く寝なさいよ。……ふらーを信じてやるんですから」
ふんっと踵を返した永四郎にわんはニヤニヤと笑いが止まらなかった。
「ありがとうございますー!!……って、だ、誰が馬鹿ですか!!」
あぁ、本当に……うふそーなふらー。
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