「どうしたの、そんな溜め息ついて……」
「ため息ついたら幸せが逃げるだーね」
同室の木更津先輩と柳沢先輩に顔をのぞき込まれていた。
気づかないうちに何度となくついてしまっていたため息に苦笑する。
「……何か気になることでもある?」
木更津先輩に真剣な顔でそう尋ねられて、思わず夢野の名前を口に出しそうになった。
危ない。
……ただ、昼食を作ってた時の夢野の様子が気になっただけなんだ。
慌てた俺にクスクスといつものように笑う木更津先輩には、何やら色々バレてしまっている気がするが、今はそれ以上追求して来なかったので胸をなで下ろした。
それからふと窓に視線を動かせば、不安定な山道をひょこひょこ移動している夢野の姿が見える。
え、いや、アイツ、夜に何してるんだ。
ただでさえ足場が危ないというのに、こんな真っ暗じゃ余計に……!
「裕太?どこに行くだーね?!」
気づいた頃には体が勝手に動いていて。
柳沢先輩の声を背中に聞きながら、夢野を追いかけていた。
「……だ、大体、薄着過ぎるんだよ!風邪引くぞ、アイツ!」
言い訳がましく呟いた台詞は、ばっと掴んできたジャージの上着に対してだろうか。
正直、自分自身よくわからなかった。
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