正しくは私と南さんと東方さん、裕太くんの四人だ。
「それにしてもタマネギやジャガイモとニンジンの詰まったダンボールが廃村みたいな場所にあったとかすごい不思議」
「確かに。木更津さんたちも海に流れ着いていたクーラーボックスに牛肉が入っていたのを見つけたし……」
「その流れで今日の昼食はカレーなわけだが」
裕太くんとタマネギを切りながらそんな会話をしていたら、大鍋に湧き水をいれていた南さんが混ざってきた。
東方さんが準備して下さった焚き火がパチパチと火の粉を散らしている。
「……カレーのルゥは元々あったしな」
東方さんが小さく呟いて大鍋を焚き火にセットした。
「……俺、わかんないんですけど、なんか……この遭難、変じゃないっすか?」
野菜をすべて切り終わったので、後は順に煮込めばいいだけとなったところで、裕太くんが漏らす。
私は無言で肯定する。
はっきりとは言えないけど、確かに何かがおかしい気がしていた。
「兄貴も言ってたんすけど、手塚さんの様子がおかしいらしいんです。いつもの手塚さんらしくないっていうか。観月さんも同意するし」
「……そういえば、千石と亜久津も言っていたな。跡部が何かをごまかしているんじゃないかって」
裕太くんの発言に南さんが腕を組んで考え込まれる。
手塚さんと跡部様か……。私にはいつもの二人に見えていたけれど、やっぱりテニスという一つのもので結ばれている彼らには、小さな違和感を大きく感じるのかもしれない。
「……きさ、跡部が部屋に籠もったさー」
「樺地クンが少し邪魔ですね」
「あったー、絶対何か隠してるさー!」
四人で考え込んでしまったと同時に、炊飯作業場の裏からそんな会話が聞こえてきた。
話し声だけでもわかる。
間違いなく比嘉の皆さんだ。
「……やっぱあの人たちも似たようなこと疑問に感じてたんだな」
そう呟いて裏を覗こうとした裕太くんの腕を掴んだ。
「な、なんだよ」
「しっ!……聞いてなかったことにした方がいいと思う」
「え、なんで……!」
動揺しているらしい裕太くんは目を見開いて驚いていた。
はっきりと裕太くんに言わないまま、南さんたちと料理に集中することにする。
『……今晩、決行します。いいですね?また夜にここに集まるということで』
木手さんのセリフがはっきりと耳に届いたのは、私の耳がいいからだと思う。
裕太くんも南さんたちも聞こえていなかったようだし……。
比嘉の皆さんが何をしようとしているのかわからなかったけれど、どうにも嫌な予感しかしなかったのだった。
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