その夢野さんの隣には氷帝の日吉が立っていた。
……あぁ、そういえば。
この合宿に参加してから、あの二人の組み合わせをよく見る。
いや、よく考えたら大会中も仲良さそうにしているのはみた覚えがあった。
「……もしかしてあの二人、付き合ってるのか──」
そこまで口にして後悔した。
深司が俯き気味にぼそぼそとぼやき始めたからである。
「お、おい!馬鹿っ、なんでそういうこと言うんだよ!」
思いっきりアキラに背中をバシッと叩かれた。勢い付け過ぎじゃないのか。腰の上あたりがヒリヒリする。
「……あぁ、もう……なんなんだよ。これじゃあまるで嫉妬じゃないか……カッコ悪いなぁ……これもあれも、詩織のせいだよね……」
それからけっこうなボリュームで「……ムカつく」とボヤいた深司に何人からか視線が向けられた。
列の先頭にいた橘さんだって驚いた顔して振り向いている。
……もちろん、日吉に放たれたらしいそのセリフは、当の本人である日吉にも聞こえていたらしい。
視線を交わした二人にオロオロしていたら、心配そうに兄貴が俺を見ていることに気づいた。
『胃が痛い……』
『……憐れ也』
とりあえずアイコンタクトを取った後、合掌した兄貴に泣きそうになった。
……それだけかよ。
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