自慢だった長い髪は跡形もなく、俺自身の手で切って。
今までの俺を終わらせたのだ。
《好きなだけお叫びください。気分がすっきりします》
そう書かれたメール文を読み直しながら、自室のベッドに背中を預ける。
添付された画像は、太陽が海に溶けるように沈む綺麗な夕日だった。
「……太陽の馬鹿野郎って誰が今時叫ぶんだよ」
しかもこんな小さい画面の写真に向かって。
「……激ダサだぜ」
返信をしようと何度かメールを打ち込もうとしてやめる。
それの繰り返しをかれこれ一週間は繰り返しているような気がした。
結局文章が思いつかなくてボリボリと頭をかき、雑誌の上に携帯電話を放り投げようとしたところで、電話から着信音が鳴り響いてビビる。
……激ダサ。
《宍戸先輩に負けません。本気の私を見せてやるぜ!》
《……頭、大丈夫か》
《泣きますよ?……あ、宍戸先輩、関東大会での活躍楽しみにしています》
《……あぁ》
そう返したら、それっきり夢野からメールはなかった。
……そうじゃねぇだろ。とか、もっと何かあるだろ、俺。とか悶々としながら頭を捻る。
「〜っだぁーもうっ、苦手なんだよ!こういうのはっ」
感謝してる。
特に何かを慰められたわけでも、長太郎のように直接特訓に付き合ってもらったわけでもない。
だけど、俺はアイツに感謝してるんだ。
「……日だまりみたいなヤツなんだよな、お前は」
どこかホッとするように暖かくて。
気づかない内にその温もりに目を閉じてる俺がいる。
いや、俺だけじゃないんだろう。
……居心地の良い夢野の隣は、きっとレギュラーの座よりも勝ち取るのが難しいんだろうなと思った。
76/79