NO水泳部YESテニス部
──何やら六角と胸元に書かれたジャージを着ている男の子たちに囲まれている。
どうしよう。調子に乗ってダジャレの男の子と波長を合わせたら、バネさんとかいう男の子にチョップされた頭が痛い。
バネさんと呼ばれるだけあって、足腰のバネは強そうだ。あ、これちょっと面白いかも。
また口に出そうとしてから、すっと無言でチョップを発動するモーションに入っていたバネさんに頭を下げた。超高速謝罪である。

「……で、本当にあの夢野詩織さんなんですよね?」

「あ、はい!」

丸坊主頭の元気のいい男の子にこくこくと首を縦に振った。
その子の隣にいるやたら二枚目の佐伯さんという人が、ニコニコと人の良い笑みを浮かべている。

「僕は六角中テニス部、一年で部長をやらせてもらっている葵剣太郎といいます!……くーぅ、今のは好感度高めの挨拶だっ」

「は、はぁ……え、あれテニス部?水泳部とかじゃなくて、まさかテニス部って言ったの今?」

「あぁ。テニス部だぞ。……俺は三年黒羽春風だ」

「うわマジですか!……バネさんは黒羽さんでしたか」

「……もうバネさんで定着しているなら、それでも構わないぞ?」

ははっと笑ったバネさんは、バシバシと私の背中を叩く。
どうでもいいがこの人は力加減をもう少しどうにかして欲しい。いや、たぶん加減してくれているんだろうけど、元々力が強いのか地味に痛い。

「樹希彦なのね〜」

さっきから、しゅぽーという機関車みたいな音を鼻から出している大きな人は樹さんというらしかった。

「そ、そうなのね〜」と思わず返せば、クスクスとサラサラの長髪の人に笑われる。

「……俺は木更津亮。樹たちと同じく三年」

「俺も三年の首藤聡。……で、本当にダビデとは初か?」

「は、はい。ダビデく──」
「天根ヒカル……二年」
「──どこにもダビデの要素がない?!しかも二年生なの?え、同い年?!」

首藤さんの質問に答えようとしたところで、驚きが連発した。
そんな私の早口ツッコミがつぼにはまったのか皆さん全員「ぶふぅっ」と吹き出される。
二枚目の佐伯さんまでその綺麗な表情を崩していた。

「……っ、顔が……ダビデ像に似てる……から、ダビデ」
「言わずもがな!」

いや、もうこれ以上私に叫ばさないでくれまいか。ダビデ──天根くんの真面目なふりした呟きに私がツッコミを入れれば樹さんの鼻息のレベルが上がっていった。
もはや皆さん腹抱えているじゃないか。

大体私はまたもやテニス部の中学生男子たちと知り合ってしまったことを一番驚いているというのに……

「で……。夢野はこんなとこで何してたんだ?」

息を整えながら、首藤さんがそう私に尋ねてきた。
ちょうど視界の端に車から降りてきた榊おじさんが映る。

「……気分転換に海が見たく──」
「首藤さんが会話の主導権を握る……ぷっ」
「──ぶふっ!」

「ダビデぇ!」
「ちょ、ま──」

……とりあえず、なんて話が進まない人たちだろうか。
今まで知り合ったテニス部の中でも一番かもしれないと、天根くんのダジャレに笑いながら感じていたのだった。

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