「ぶーぶー!俺メールしたんだけどにゃー。返信すらないんだよー」
「あ、俺もっす」
「……情報を整理すると、都大会が始まる前日あたりから音信不通になっている。これは何かあった確率が高いな」
不二、菊丸、桃城のセリフに続けて乾が眼鏡を光らせれば、全員の顔色が一斉に変わった。
「ま、まさか交通事故とか!」
「……大石、縁起でもないことを口にするのは止めないか」
「だ、だけど、手塚っ」
オロオロし始めた大石をもう一度窘めてから、ひとまず跡部に連絡するから落ち着けと他のテニス部員たちにも伝える。
どうやら夢野は、地区予選でレギュラーのほかにも顔見知りが出来ていたようで、レギュラー以外もざわざわとし始めていた。
確かに不思議な女子だとは思うが、そこまで印象強く残るのだろうか。
……いや、確かに自然な感じで記憶には残る。柔らかい印象なので、曖昧なのはそのせいかもしれない。
『……アーン?』
「跡部か。聞きたいことがあるんだが……」
『……青学もか。これで例の合宿参加校全てじゃねぇの。……夢野なら、高熱を出してな。大事をとって入院中だ。もうすぐ退院予定だから、特に気にするな』
「……そうか」
『あぁ。それだけなら切るぞ。……都大会ではとんだダークホースにやられたが、関東大会ではベストメンバーでいく。覚悟しとけよ、アーン?』
「望むところだ。では失礼する」
『……ふん』
鼻で笑うような声が電話向こうから聞こえた。
と同時に、俺が電話を切ったのを確認し菊丸たちが押し寄せてくる。
「なんて言ってたのかにゃー?!」
「……俺聞こえたッス。入院中だって……」
「「え?!」」
越前がぽつりと呟けば、何人かが目を見開く。大石に至っては、胃のあたりを抑えながら口をぱくぱくさせていた。
「……大事をとって、だそうだ。彼女は無事だから安心しろ。……ランニングを始める」
そうランニングを始めても、不二たちの憶測話は止まらなかったが無言で流す。
ザッザッと音を立てるグラウンドの土に耳を傾けながら、雑音の中にある音楽を無意識のうちに探していた。
「…………合宿参加校全て、か」
零れ落ちた台詞は、自分たちの足音に紛れて消えていったのだった。
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