「アーン?」
不意に……どこからか響くヴァイオリンの音色に、跡部さんが眉頭を寄せました。
この曲は、知って……います。
確か……
「……タイスの瞑想曲か」
「ウス」
思わず跡部さんの呟きに頷いていました。
まさか俺が跡部さんのその呟きに反応するとは思っていなかったようで、顔ごと向きを変えられる。
「……樺地、珍しいじゃねぇの」
「…………」
どう返答していいのか、わからない。
「ふん、まぁいい。……今度話すことがあったら言っておけ。……俺様はそんな小さいことを気にするような男じゃねぇってな」
「……ウス」
跡部さんは口角を上げてから、また忍足さんたちの練習風景を眺められた。
……夢野詩織さん、彼女だということは、俺には見当がついていましたが、さすが……跡部さん、です。
「……、」
彼女から昨日頂いたお菓子は大変美味しかった。
俺もよく作りますが、やはり……その人らしさが、お菓子には表れると……思います。
夢野さんのお菓子は、とても優しい味でした。
そう……
この、ヴァイオリンの音色と同じように
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