登校したら土曜日でした
「そうだよ、跡部様の優雅な学食が催されるのは金曜日だと、昨日教わったじゃないか」

篠山さんの軽やかな笑い声が聞こえてきそうだなぁと思いながら、ふぅっと一息つく。

今日は土曜日。
もちろん休日。

だから私は昨夜久しぶりにチャットを楽しんだはずなのに。

朝起きたら、綺麗にそのことを忘れていた。
……間抜けもいいところだ。


──……ッ

ぼんやり校舎を眺めていたら、耳にその音は入ってきた。

地面に跳ねるボールの音。

心地よい音の打ち合い。

「…………また、テニス」

立海でもそうだった。

知らず知らずに私の足はいつもそこに向かって。

「……わぁ」

これほどまでに部員数を誇っている部活を見たことがない。

テニスコートの横にある道をランニングしている軍団に目をぱちぱちさせてしまった。

150、否……200人ぐらい?

もしかしたら、もっとかもしれない。

そしてテニスコート内には、数人が黄色い球を打ち合っている。

「……樺地くん発見」

おかげでその斜め前に王様のように座っている跡部様も発見することができた。

昨日の無礼をお詫びしたい。

雌猫といわれたとは言え、外に出すべきではなかった。

……でも、もう一度跡部様の前にいく勇気はないわけで。

たぶん、樺地くんが独りでいてくれない限り、彼とも話すことはできないと思う。


「……だから、ワルキューレ」

私はヴァイオリンケースをベンチに置いて、おもむろにヴァイオリンを取り出す。

私の大切な相棒、ワルキューレを。


この心を
せめて音楽に乗せて

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