拗ねた
「ブンちゃん、どうしたんじゃ。朝からずっと沈んどるのう」

「…………幸村くんがなんか怖い」

「は?」

昼になったというのに、机に突っ伏したまま一向に動かないブンちゃんの背中に声をかけたら、憔悴しきった声が返ってきた。

いやしかし、何故ここで幸村が出てくるんじゃ。意味分からん。

「ん」

首を捻っていたら、ブンちゃんが力なく自身の携帯電話のディスプレイを向けてきた。
そこには幸村からのメールだと思われる文章がある。

《ケーキバイキングなんかに行って、また太りたいのかな?……いい加減にしなよ》

文面だけでは普通のメール文かもしれない。
だがこの文からは、沸々とした怒りを感じる。というよりも、確実に相手は何かにご立腹である。
いや、ブンちゃんがケーキバイキングに行ったことに対してだとは思うが、それにしては怒りが大きい。

「……他に何したんじゃ。参謀が部長に用意した菓子でも食ったんじゃなか?」

「食ってねぇよぃ!つか仮に食っても幸村くんはそこまで怒らねーだろぃ?!…………柳くんから聞いたんだけど、もしかしたら原因は夢野かもしんねぇんだ」

「……は?」

今度は何故夢野さんの名前が出てくるんじゃ。
迂闊にも間抜けな声を発してしまった。
軽くせき込んでから、ブンちゃんの青白い顔を見る。

「ケーキバイキング、夢野と行ったんだよぃ。……それに和太鼓コンサートに夢野と行ったらしい真田くんにも嫌がらせメールが来てるらしいし……そのどっちの場にいた柳くんにもメールきてるつぅしさ……あ、あとおまけでジャッカルにも」

「ちょ、ちょっと待ちんしゃい」

頭を抱えながら衝撃の発言をつらつら述べるブンちゃんに眉根を寄せた。
なんじゃ。
一体何の話を言うとるんじゃ。

誰が夢野さんと和太鼓コンサートに行ったと?
ケーキバイキングに誰と誰が行ったと……?

いやそれよりも、何故幸村がそこに反応してくるんじゃ。
夢野さんと何か関わりがあるというんか?
だったとしても、怒りの感情をぶつけてくるなど、それはただの嫉妬じゃなか?


「…………それより、のけ者扱いが耐えられん。いかん、まーくん、色々ショックで死にそうナリ」


……未だに夢野さん本人からは変態だと思われて、ろくにメールでも相手してもらえんし。
面識すらないだろうと踏んでいた幸村が、夢野さんと知り合いどころか何かあるっぽいし。

その日は一日、ブンちゃんと同じように机に突っ伏した。

クラスの女子からは、二人して拾い食いでもしたのか、とか。
テニス部で流行っている病気(元気のない真田や溜め息ばかりついているジャッカルの姿が目撃されたらしい)じゃないかと噂されとった。

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