美少女と恋バナ?
《yuki:……へぇ、じゃあ今はすっかり元気なんだね》

《パンダ:そうなんだよー!だからきっとyukiちゃんも良くなるよっ》

一時間前にチャットで知り合ったyukiちゃんという一つ年上の子と仲良くなった。
ちゃん付けで呼び合うようにもなったし、入院していた(yukiちゃんは現在進行形)ということですっかり打ち解けあってしまったのである。

実は昨日、いつものメンバーとのチャットが、ジロー先輩お泊まり事件のおかげで何やら恐ろしい空気になった。
あの時は、三人とも私の親か!とつっこんで落ちたのだが、すぐに光くんと十次くんにメールで『いきなり落ちるな』と怒られた。どうやら深司くんもボヤいていたらしい。
そんなわけで、気まずいと感じた私はいつものチャットルームではなく、適当なお部屋に逃げ込んだわけである。

だけど、今日はこのチャットルームに入って良かったかもしれない。
何故か男の子(しかもテニス部)と仲良くなってばかりいたので、今回はなんだかニヤニヤしちゃうくらい嬉しい。
こんなに気の合う女の子は初めてだ。しかも落ち着いた話し方(所詮文字だけど)から、美少女の匂いがする。
最近可愛い女の子に縁があるので、この直感は正しい気がした。


《yuki:……ダメだよ。女の子の一人暮らしに男を連れ込んじゃ》

《パンダ:あはは、気をつけます》

yukiちゃんにいつもはチャットするメンバーが決まっていること、でも今日はまだなんとなく気まずいから違うルームに入ったこと、その理由を簡潔に冗談を交えて話したら、やんわりと注意された。
一生懸命話を聞いてくれた上に親身になってくれるなんて、やはり美少女である。美しさは心に表れるのだ。私も見習わなければいけぬ。


《yuki:それで、話を聞く限り仲のいい男子が多いみたいだけど……、好きな男子とかっているの?》

画面に向かって吹いた。
思いっきりディスプレイに私の唾が飛んだではないか。汚い。

なんというか、yukiちゃんはさらりと何を聞いてくるんだ。あ、いや、待てよ。これはアレか。アレなんだろうか。
世に言う女の子同士の恋バナというやつじゃないのか!
確か流夏ちゃんが『話を持ち出した本人は必ず好きなヤツがいるのよね。話したいからその話題を振るのよ』と言っていたアレだ、アレに違いない!

《パンダ:好きな男子……恋愛的な目では見ていないよ。最近仲良くなる男子、みんなイケメンだから畏れ多くて……》

《yuki:ふぅん。イケメンって例えば?》

《パンダ:え!そ、そうだなぁ。あ、私の今のお隣さんはクールビューティーというか、髪型は少しキノコみたいだけど……》

やはりyukiちゃんも年頃の女の子なんだな。イケメンに食いついてくるとは……!
とりあえず、若くんのことから跡部様まで。氷帝のテニス部の皆様を名前は出さずに雰囲気だけを伝えてみた。
何故か丸眼鏡の先輩の話をしたら、彼のことは特別何も思ってない?と尋ねられたので、ないと答えたが、もしかしたらyukiちゃんは眼鏡をかけた人がタイプなのかもしれない。
すかさず、青学の眼鏡の二人をこんな人もいましたよ程度に紹介しておいた。……小春お姉様は小春お姉様なので控えておく。


《パンダ:あ、精神的なイケメンだと、けしからん人がたまらんです!あと、スキンヘッドでハーフの先輩もいい人》

《yuki:……何言ってるのかわからないけど、うん。わかったよ。そういえばケーキバイキングに一緒に行ったっていうのは、どんなタイプの男子だったっけ?》

《パンダ:ぽっちゃり系可愛かっこいいタイプの人と、軟派なタイプの人と、眠りの国の天使タイプの人と、猫タイプの先輩、爽やか少年タイプ、年下生意気系タイプ……さっき書いたハーフの先輩、糸目美人ストーカータイプの人ですね。……は!yukiちゃんの好みのタイプがこの中に?!》

《yuki:ふふ、けしからんとハーフとぽっちゃりと糸目は確実に違うかな……》

何故かその時、yukiちゃんがハンターに見えた。
愛の狩人的なアレだと思いこんだが、なんとなく違う気がする。

それから、やっぱり『女の子なんだから油断しちゃダメだよ』と注意されたのだった。





──次の日、体育の合同授業があって、何故この学校は隣のクラス同士じゃなくてAD、BE、CFでの合同なんだろうと疑問に思っていたら口に出ていたらしく、走り高跳びを跳び終えたタマちゃんに後ろから抱きつかれて「そのおかげで〜鳳くんの姿が拝めるのよ〜」と囁かれた。
そうか、タマちゃんは鳳くんもカッコいいと言っていた。その後一番は揺るがないわ!跡部様しかないでしょうと胸を張っていたけれど。

「……それで、今日は日吉とまともに話せた?」
「……ま、まぁそれなりに会話は出来たよ?」

タマちゃんと戯れていたら、ちーちゃんが額の汗を拭いながら私にそう尋ねてきたので、首を傾げて返す。
確かに昨日よりかは若くんの謎の怒りも沈静化に向かっているようだった。

「……うん、まだどことなく不機嫌みたいなんだけど」

「ふふふ、私が日吉くんの不機嫌を治す方法を伝授してあげる〜っ」

「……ま、今回はタマのアイディアが効くかもしれないわね」

ごにょごにょと耳打ちしてくれたタマちゃんの方法に視線だけを若くんに向ける。
ちょうど、バスケの試合最中だった。
鳳くんのチームと戦っているらしい。

タマちゃんとちーちゃんに背中を押されて、私は若くんに応援の言葉をかけることにしたのだった。

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