なんでも最近新しく買い換えたので、入院で手持ち無沙汰だろうと、暇つぶしように持ってきてくれたらしい。
「ありがとう、蓮二」
「あぁ。少し古いがまだまだ使えるはずだ」
フッと笑みを浮かべた蓮二に、俺もつい笑っていた。
……本当に俺は、仲間に恵まれているらしい。
それから真田たちと大会の話をしたりして、彼らが帰った後はノートパソコンを起動させてみた。
あまりこういうのは得意じゃないが、隔離された空間にいるせいか、妙に集中してしまう。
「……ん、十代専用チャット?」
ネットサーフィンをしていたら、ふとチャットルームが並ぶページに飛んでいた。
チャットなどしたこともなかったし、他にすることもなかったので、そのページを見つめてみた。
どうやら、ジャンル毎にルームがいくつも作成されているらしい。
「……あぁ、誰でも作成できるのか」
特に何かを考えていた訳じゃない。
たまたま、何故か興味が湧いて。
趣味の話でもしませんか、とそんな名前の部屋を作成する。
名前は適当にyukiとつけた。
誰も来ないならば、すぐに止めればいいかと起こしたリクライニングベッドにもたれ掛かる。
その後すぐだった。
《──パンダさんが入室しました》
流れたメッセージに少し体を起こす。
《パンダ:あの、こんばんはー》
《yuki:こんばんは》
チャットするのもその時が初めてだったし、少しばかり緊張しながら文字を打ち込んだ。
《パンダ:yukiさんの趣味ってなんなんですかー?》
《yuki:あ、ガーデニングなんだけど》
《パンダ:おほう。何やら今yukiさんがすごい美少女の予感がしました!あ、私はヴァイオリンを弾くことが趣味になるのかも……後はパンダを愛でることも!》
「……ちょっと待って」
画面の前で息を飲む。
否、まさか……だけど、でも……
直感的に頭の中に浮かび上がった人物を否定するように、何度か頭を振った。
だけど肯定したい気持ちも沸き起こり、異様に心臓がバクバクと音を立てる。
《yuki:素敵な趣味だね。……えっと、実は今入院中でガーデニングできなくて、その気分を晴らすためにチャットをしてみたんだけど》
もし、もしも彼女なら──
《パンダ:おぉ!そうなんですか!私も前まで入院していたから、気持ちわかる!!》
「…………夢野さ、ん……っ」
思わずぽつりと零れ落ちた台詞。
ただ確信のようなものを手に入れた俺は、じんわりとマウスを握る掌に汗をかいていた。
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