少し後悔した
《──elevenさんが入室しました》

久しぶりに見つけたパンダと、Eveとチャットしとったらまた新しいやつが入ってきた。

《パンダ:elevenさん、こんばんは!今日は早い時間だね!……Eveさん、善哉さん、さっき話した同い年のテニス部の子だよ!すごいよね。今ここにテニスやってる子が三人揃ってるなんて!》

《eleven:どうも》

《Eve:……こんばんは》

《善哉:どーも》

文章の雰囲気から、たぶんパンダは偶然が重なるなんてすごいとでもいうように興奮しとるんやろう。

流石に年齢から部活まで被るなんてキモいっすわ。……いつもならそう書き込んでたが、パンダがあまりにも嬉しそうなオーラを画面向こうから届けてくるので、やめた。

たぶん、Eveとかいうヤツも発言が止まったところを見ると、何か長文を打ったが送信することなく消したんやろう。


《eleven:なんか怖いな、その偶然》

……空気読めや。eleven。

思わず部屋の中で舌打ちしてもうた。

《Eve:……天然?天然はもうパンダだけでお腹いっぱいなんだけど。……というか、elevenは男?だとしたら、部活は強いの?善哉もだけど、俺、ちょっと気になってたんだよね》

《eleven:……男。今年レギュラーになった。一応関東ではうちの学校、有名だとは思うけど》

《Eve:へぇ。関東なんだ。……有名だからって今年全国にいけるかわかんないよね。無名校に負けるかもしれないから、注意した方がいいよ》

挑戦的なその文章にめんどくさくなる。

《善哉:なら、強いかどうか聞いても無駄やないっすか。……まぁ自分ら関東みたいやし、全国やったら俺もおるんで。気張ってください》

《Eve:……へぇ。生意気だよね、君。でも、どうやら全員レギュラーなのか。……流石にここまでくると、気持ち悪いな。……なんだよ、まったく》

会話は一旦そこで途切れた。

たぶん、どこの学校かなんて意味のない推測をしとるのかもしれへん。

俺は別にそこまで興味はなかった。

実際全国大会で対戦することになるなんて、あるわけない。

否、あらへんのが普通や。


《パンダ:うわぁ!なんかみんな本気で青春しているみたいですごいね!!テニス、よくわかんないけど、三人が出る試合なら見に行くよ!応援するっ!私、東京だけど、試合会場が近かったら教えて!》

俺は知らずにまた舌打ちしていた。

パンダ、東京やったんか。

関西ではないやろとは思っとったが、なんやねん、それ。

《eleven:俺も東京だ》

《Eve:俺も。……なんだ、意外と近い距離にいたのか。別にきて欲しいだなんて思ってないけど、パンダがどうしても応援したいなら、試合する時教えてあげてもいいけど……まぁ社交辞令かもしれないけどさ。だとしたら教えない方がいいのか……》

……うわ、うっざ!Eve、うっざ!!

しかもelevenも東京なんか!関東、せっま!!なんで三人とも東京やねんっ、他にもあるやろっ。


「…………あ、東京って」

そういえば、部長と副部長がなんや言うとったな。

副部長が帝国ホテルの宿泊&ディナーコース付の無料券当たったから、ついでに東京観光もしてくるって……

なんやいつも影薄いくせにええもん当てるわ副部長。

で、自腹でよかったら財前もついて来てえぇで?部屋代だけはタダや。とかわけわからんこというたから、めんどい言うて逃げた。


…………ちっ、知っとったら謙也さんにたかってついて行ったんに。


《パンダ:はっ!これがいわゆるオフで会うってやつなのかな?!》


画面上でやり取りされる内容に、少しだけイライラしている俺がいて。

なんでこんなにも東京行きたい思ってんのかもわけわからんかった。


……ただ、

顔も声も知らんパンダに会いたい思た。



ほんの興味と、ようわからん直感。


それだけや

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