携帯電話の画面を覗いてから、俺は小さくガッツポーズをした。
目の前にいる可愛い女の子二人がそんな俺をきょとんとした顔で眺めている。
慌ててヘラッと笑みを浮かべてから、彼女たちに電話番号とメールアドレスを聞くことにした。
「……いやぁ、本当に今日はラッキーデーだなぁ」
ぽつりとこぼしながら、歩道橋の階段を見上げる。
詩織ちゃんからはデートオッケーの返事がくるし、学校横の横断歩道でした合同練習に来ていたらしい他校生への軟派は成功するし、今も歩道橋を登る子たちは目の保養だ。
「おいこら変態!」
「うあっ?!」
吃驚した。
いきなり視界に回し蹴りが飛んできた。
動体視力がいいおかげもあり、慌てて後ろに仰け反り避けたが、そのまま足を滑らせて尻餅をついてしまう。
「いてて……まいったなぁ」
「まいったなぁじゃない!この覗き魔が!警察に突き出されないだけ感謝しなよっ」
顔を上げれば、ショートカットのお──……んな、の子。
かなりスレンダーな子だが、顔はそこそこ整っている。いやまぁ、髪型や雰囲気が男っぽい子だけど。
「ハハッ、メンゴメンゴ!たまたま見えちゃっただけだから!ウンウン、女の子は笑ってる方が可愛いよー」
「げ。ムリだ。こういうタイプは無視しよう」
俺が立ち上がってすぐに腕を回して肩に手をおけば、彼女は頭をかいてから立ち去っていった。
最後にくれた股間へのキツい一発がなければ、この後の会話を盗み聞きできたかもしれない。
だけど俺にはそんな余裕はなかった。
「流夏ー!何してたの?山吹中との合同練習始まっちゃうよ」
「あー、なんか変態を」
「東京に出てきてまで何やってんの」
「だよねー。あー、なんか詩織が心配になったから、メールだけさせて。山吹中にも知り合い出来たとか言ってたんだよね……」
「相変わらず夢野さんの保護者?……でも本当に始まっちゃうから、早くねー」
「はいよ」
……とりあえずわかったのは、立海のジャージだったよなぁぐらいである。
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