パンダと友達
──チャットへ繋いだら、久しぶりにパンダがいた。

パンダ……なんて動物のハンドルネームをつけているコイツは、どうやら同い年の女らしい。

話が合うやつなんだ、と神尾に話したら、ソイツ実は男でネカマなんじゃねぇか?と疑われた。

……そんな回りくどい嘘をつくようなやつじゃない。

大体神尾は、俺と話が合うだけでなんで男にしたがるんだよ。本当に失礼なやつだよな。

あーぁ、嫌になるよ。自分のことを棚に上げてさ。


いつの間にか、またいつものように考えを口に出していた。

が、今は自分の部屋の中なので特に気にしない。否、別に俺はいつも気にしてないんだけど。

ただ神尾たちが、深司のぼやきが始まったとか騒ぐからさ……煩いんだよね。一々……


《Eve:どうかした?》

《パンダ:ごめん!独り言を減らすにはどうしたらいいかな?》


パンダの発言がいつもより少ない気がしたので話しかけたら、そんな文章が返ってきて、思わず画面を凝視した。


《Eve:……いきなり何?》

《パンダ:私……独り言多いって言われるから、ちょっと気にしてたの》

どうやら、俺の独り言がパンダに伝わったわけではなかったようだ。

否、そんなことわかってたけどさ……ほら、ちょっと驚いて動揺しただけ。

《Eve:ふぅん。でも出るものは仕方ないんじゃない?……俺もよく独り言出てて、ぼやきが始まっただなんて言われるし……っていうか、リズムリズム煩いやつに言われたくないんだけどさ》

《パンダ:リズム??》

《──善哉さんが入室しました》

《Eve:スピードに自信があるやつなんだけど……》

神尾のことを話したいわけではなかったが、尋ねられたので適当に返せば、その間に善哉というヤツが入ってくる。


《善哉:パンダ、久しぶりやな。……って、なんの話や》

《パンダ:お久しぶり!えっと》

《Eve:部活仲間にそんなヤツがいるって話》

《善哉:ふーん。うちの部にもおりますわ。浪速のスピードスターとか恥ずかしい……、ヘタレのうっざい先輩が》

善哉はたぶん関西のヤツなんだろう。
前にもパンダと話していた時に何回か会話した。

もし関西のヤツじゃなくて、ネット上のキャラ作りか何かでこんな話し方で書き込んでるんだとしたら、現実では近づきたくないな。

《パンダ:そ、そうなんだ。そういえば、ちょっと前に深夜にチャットした子もテニス部だっていってたよ》

《Eve:ふぅん。あ、俺、少し席外す》

パンダの発言の直後に俺の携帯電話が鳴った。ディスプレイには神尾の名前。

……無視しようかとも思ったが、明日にまたつっかかられるのも面倒くさいというか嫌だから、出ることにした。

「……もしもし、神尾、何?」

パソコンの画面上に、パンダと善哉が俺を置いて楽しげに会話を続けているのが見える。

……なんだよ。
先に話してたのは俺だろ。大体、付き合いだって俺の方が長いんだけど。……たぶん。

否、ネット上でだけどさ。

…………これで神尾の電話の内容がつまんない用件だったら、あの鬼太郎みたいな前髪切ってやる。

『……それは止めてくれ』

電話の向こうから聞こえた神尾の声は、力なく笑っていた。

あぁ、また独り言になってたのか、なんて考えたが反省はしない。

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