不二さんの弟さん?!
──何故、こんなことになっているんだっけ。

「……私のアホ、私の考えなし、私の間抜け……」

ブツブツと己への悪口を口にしながら、私は只今不二さん家でシャワーをお借りしている。
何故こんなことになっているのかと、私は私自身の首を締め上げてでも問い詰めたいところだ。

「…………私が考えなしに川に飛び込んだからさーハハハハハ」

乾いた笑いを吐き出してから、はぁっと今までで一番深いんじゃないだろうかというぐらいの溜め息を零す。
鏡に映った自分の姿を確認してから、胸元に雷のように走る事故の傷痕に苦笑した。

その時だ。
信じられない事件が起こったのは。

「兄貴、何夕食前にシャワー浴びてんだよ。つか、ここにある服俺のなんだ……け……ど」

「…………っ」

ガラッと問答無用で開いた風呂場の曇りガラス戸。
その向こうに立っている短髪の見知らぬ少年は、素っ裸の私を見て目を見開いたまま固まってしまった。
かくいう私も動けない。いや、もうどうしたらいいのか頭の中が真っ白である。一つだけはっきりとしていることは、死ぬほど恥ずかしい。
悲鳴をあげるべきところだろうが、声すらあげることも難しいほど恥ずかしい。

「っ、〜〜?!〜っっ?!?!」

長いのか短いのかわからない時間停止のような沈黙状態を破ったのは、何語かわからないほど狼狽えた少年の大声だった。

ビシャンッと物凄い勢いで閉じられた戸に、腰が抜けた私は人様の風呂場のタイルの上に座り込んでしまう。
……なんというか、全部見られてしまった。乙女が恥じらい隠すべき部分をさらけ出してしまった。

「おふぉおぅう……」

カァーと今更顔中が熱い。きっと火が出てる。人体発火して、不二さんちを放火してしまう自信が今ならある。


「……否、それよりも、彼はどなた様……っ」

ボロボロと情けないことに吃驚しすぎて涙まで出てきた。

混乱した私が冷静になったのは、それから暫くして脱衣所の向こうの廊下から「あれ?裕太、今日は寮から帰って来たんだ?おかえり……ってどうかしたの、そんな鼻血出して……っ」と不二さんの声が聞こえた後だった。

「そ、そそそれより、あれ誰だよっ!なな、なんで知らねーヤツがうちの風呂場に……!」

「え?……裕太、もしかしなくても、開けちゃったの?……夢野さん、弟がごめん!大丈夫かな?」

「……たぶん大丈夫ですたぶんはいたぶん……っ」

とりあえず、超高速で用意していただいた服に着替えましたとも。

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