間抜けなパンダと生意気過ぎる一年
──あぁ、イライラする……。

生意気過ぎる青学の一年、越前とかいうやつの球を返しながら、俺は何度目かの舌打ちをした。

なんでこんなに苛つくのか、考えたら答えは簡単で。
間違いなく間抜けなアイツのせいだ。
パンダこと夢野詩織の。

「……だからなんで青学を応援してるんだよ……腹立つなぁ……それになんで神尾も負けるんだよ……あーぁ、嫌になるよなぁほんと……」

「……ねえ。さっきからブツブツうるさいんだけど」

ボヤいていた俺に偉そうに言ってきた越前を見る。余裕綽々と言ったその顔にまたイラつきが募った。

こいつ、試合始まる前に詩織に近づいて何か言っていた。
それにさっき神尾と対戦した海堂とかいうやつも仲が良さげだったし。
……氷帝よりも青学を応援している理由はこの二人のどちらかが主な理由なんだろうか。

そんなことを考えながらも、トップスピンとスライスを交互に打つ。
まだ未完成の技だが、この一年に勝つにはこれしかない。

……本当に生意気なんだよ。
いい環境に、いい先輩……一年はもっと苦労すべきだろ?

「……それに、詩織のことも……」

次の瞬間、ピクリと縮みあがった越前の筋肉は、スポットという麻痺状態に陥った。
俺はそれを見逃さず、狙ってラケットを振るう。

「……にゃろう!」

「……!」

まさか、体を回転させて強引に打ちにくるとは……でも無理だよ。スポットに陥っている間は握力も一時的にマヒしてるんだから。

「危ない!」

思わず目を見張る。
越前のラケットが、その手を離れてネットの支柱に当たり割れたのだ。
しかもそのまま越前に向かって跳ねる。
痛々しい音とともに越前の左瞼をざっくりと切った。
…………流血もけっこうあるし、あぁもう試合続行なんて無理だろうなぁ。なんか後味悪いよね……怪我させたみたいだしさぁ。
詩織が心配そうにオロオロしているのもまた嫌な気分を増幅させた。
……早く棄権するって言えばいいのに、信じられないことに越前はまたラケットを握る。

「……こんなことで一々騒ぎすぎだよ」

「…………君、一度負けといた方がいいよ……」

怪我の前と速度も回転も変わらない打球。
ニヤリと不敵に笑った越前は、本当に嫌になるくらい生意気だった。

……橘さんにさえ回せば不動峰が勝つんだ。
悪いけど、詩織の応援は無駄になるから。

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