意地でも会話に
「……」
「……」

目の前でキャッキャウフフとじゃれ合っているような二人にイライラしてきた。
詩織も鳳も、楽譜とヴァイオリンを取り出してから意味が分からないクラシック音楽の話ばかりしている。
俺と宍戸は呆然とその二人を眺めるしかなかった。

「…………宍戸、クソクソ!あいつら日本語喋ってんのか?!」

「……まぁ、恐らくは。つか、俺ら本当に何しにきたんだか……激ダサっ」

はぁっと深くため息を吐き出した宍戸に、ぴくりと反応して鳳が「すみません!」と謝ってきた。
だが、明らかにその謝罪は宍戸だけに向けられたものである。
……クソクソ、俺、鳳のこういうところ嫌いなんだけど。
否、確かに勝手に付いて来たのは俺だ。誘われてた宍戸に便乗したのは俺だしそれは間違いない。だけど、さすがにもう少し俺にも気を使えよ!クソクソ鳳のバカ!後、詩織もバカ!!

「な、なんか理不尽に睨まれてる?!落ち着いてください!ほら、岳人先輩、また飴玉あげますから!」

「餌付けか!」

ばっと詩織の手から飴を奪って包み紙をあけてから口に放り込む。
あ、今度はピーチ味だ。さっきはパイン味だったんだよな。

「……やっぱ餌付けか!」

「さ、さっきから一人つっこみしてどうしたんですか?!怖い!相方が忍足先輩だからって、無理に笑いを極めなくても……!」

「極めてねぇって!つか、独り言ブツブツうるさい奴に怖いとか言われたくねぇんだけど?!」

息切れ気味に会話していた。
はぁはぁと呼吸を一度整えてから顔を上げれば、鳳と宍戸が微妙な顔で俺を見つめていて……。

否、わかってる。
どうせ宍戸は激ダサだとか言いたいんだろう。

「……く、クソクソ!もうどうでもいいから、お前ら早く合奏してみそ!!」

「……あ、そうですね。夢野さん、昼休みの残りもあまりないし、やりましょうか」

「う、うん」

やっとヴァイオリンの音を鳴らし始めた二人にそっと息をつく。

見つめ合うように音楽を奏で始めた二人を見て落ち着かない気もするが、さっきほどではなかった。

俺にとってヴァイオリンは未知の領域だし、正直クラシック音楽なんてのは苦手だったりする。
俺としてはダンスができそうなノリのいい曲の方が好きだ。

だから、クラシック音楽について語られても話に入ることすら出来なくて、無性に歯がゆかった。
だけど音楽を聞いて感想を言うぐらいならできるはずだ。
それなら、詩織とも話せる気がした。




「……宍戸さん、俺たちの演奏どうでしたか?!」

「え、あー……良かったと思うぜ?」

「本当ですか?!夢野さん、宍戸さんが褒めてくれたよ!」

「あはは、良かったです……」

「ちょ、クソクソ!鳳っ!俺にも感想聞けよ!!」

「あ!向日さん、まだいたんですねっ」

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