後輩が充血してる
「……赤也、お前……今日はやたら目薬をさしているが大丈夫か」

「あー……平気ッス、たぶん」

そう答えた赤也は、ぼんやりした顔つきで快晴の空を仰いでいる。
手に持ったコンビニ弁当が斜めに傾き、手付かず状態の中身は悲惨なことになっていた。

「なんだよい。赤也、腹減ってねぇなら俺に寄越せ!」
「コラっ、ブン太!」
「いっ!な、なんだよぃ!ジャッカルのくせにっ、ハゲ!」

赤也の横から唐揚げをかっさらおうとしたブン太の手を叩けば、唇を尖らせて抗議してきたが無視する。
今はブン太よりも赤也である。

そう言えば、今朝は休日練習に珍しく遅刻してこなかった。
否、正確に言えば真田や柳たちと同じくらいの時間帯に着ていたようだ。今朝の真田の狼狽え方は尋常じゃなかった。

そして目の充血がヤバい。本人曰わく昨夜から一睡も出来なかったようだ。
ブン太や仁王が新作のゲームでも徹夜でやってたんじゃないかと言っていたが、本人は弱々しく首を横に振っていた。

目の充血がこれ以上酷くなると、あの悪魔的な性格になってしまうので、心配した俺と柳は赤也に目薬を手渡したのだ。
そして赤也は、合計七回目となる投与を今し方したのである。


「……ジャッカル先輩」

結局箸を止めた赤也は、ぽつりと、俺だけに聞こえる声を吐き出した。

「……打てないんス。メールの返事が返せなかったんスよ……」

「は?誰に……」

突然の発言にわけがわからず聞き返そうとしてから、言葉を飲み込む。

そういえば、今朝、ブン太だけではなく柳生までもが嬉しそうに何か語っていたはずだ。
内容は夢野から返事が来た、だったはず。
俺と真田は合宿直後に既にメールのやり取りは行っていたので、特にそれが特別なことだとは思わなかったが、アドレスを渡したまま夢野から連絡が来なかったヤツらは落ち込んでいたらしい。

……あぁ、そうか。
全員に来たんだから、当然赤也にも来るわけだ。

「もうマジ意味わかんねぇ……俺、変ッスよね?!ジャッカル先輩、助けてくださいっ」

メール返信文が浮かばず、一睡もできず、食事が喉を通らないほど、か。

「そ、そうだな。とりあえず、今部活中だとか簡単な内容から返信してみたらどうだ?」

「えっ……!べ、べべべ別に夢野にメールしたいわけじゃないッスよ?!俺はただっ」

ただ、なんだ。
そんな真っ赤な顔で何を否定する気なんだ。お前は。

「…………や、やってみるッス」

小さく唸ってから、携帯電話をいじり始めた赤也に涙がほろりと落ちそうだった。

……とりあえず、少し晴れ晴れとした表情の後輩が午後練習で寝てしまわないことを祈る。

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