いつの間にか、ふわりと
「し・し・どっ」

「…………」

「え!何その嫌そうな顔。心外なんだけどー」

髪の毛の先を弄りながら、口を尖らせている滝に深い溜め息を吐いてやった。
大方、昨日の夢野を尾行した話をどこからか仕入れたのだろう。そういえば、さっきまで若に絡んでいた気がするから、無視され続けて俺に標的を変えたというところだろうか。

「……にしても、夢野さんがいると退屈しないよねぇ。今日もヴァイオリン練習に来たらいいのにー。この時間じゃ今日は無理かなー」

「……お前、ほんっと夢野で遊ぶの好きだな」

合宿の時の着せかえ人形の時から思っていたが、僅かに夢野が不憫に感じた。

「あはは!だって可愛いからねー。夢野さんも誰かもー」

ちらりと、確実に若を見たな。今。

もう一度ため息をついたところで、休憩しにきた鳳が走ってやってくる。

「夢野さんは、今日和太鼓コンサートに行くって言ってましたから、たぶん練習しに学校には来ないはずです」

どうやら俺と滝の会話が聞こえていたらしく、いつもの微笑みを携えてそう言っていた。
そしたら、急にフェンス近くで素振りをしていた忍足が「なんやて?」と会話に入ってくる。

「鳳、間違いなく詩織ちゃんは今日和太鼓コンサートや言うてたんか?」

「え、えぇ。明日は母の日でお墓参りに行くとも言っていましたから、間違いなく今日が和太鼓コンサートです」

「……真田とデートの日、今日やったんか」

「「ぶっ?!」」
「い、今なんて言ったC〜?!」

思わず滝と吹き出してしまった。
ジローが食いつけば、若も手を止め、岳人も忍足を見つめる。

「せやから、和太鼓コンサートは立海の真田と出掛けとるんやって。本人がメールしてたん、みたしな」

「な、なんで、立海の真田となんだよ?!クソクソ意味わかんねぇ!」

「阿呆。俺かて意味分からんかったわ」

がりがりと頭をかいている忍足は、心なしかイライラしているように見えた。ジローと岳人はそわそわと落ち着かなくなっている。

「……し、知っていたら止めたのに」

「いや、長太郎。昨日止めれるような話じゃねぇだろ……」

つか、真田と和太鼓コンサートに出かけようが本人の勝手じゃねぇのか?
お前ら夢野の保護者かよ。

落ち着かない面子に苦笑していたら、若以外の準レギュラーと平部員に声をかけていたらしい跡部が樺地を連れて戻ってきた。

外周100周でもしろって言われるんだろうなと覚悟する。


「……榊監督から、夢野が聴きにいっている和太鼓コンサートの公演場所を聞いた。三時半から約二時間として、…………お前ら、夕食奢ってやるよ、アーン?」

ニヤリと笑った跡部に拍子抜けしたのと、頭痛がしたのはほぼ同時だった。

俺はこの時思った。

こいつら、夢野馬鹿になってるんじゃねぇかと。

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