緊張して死ぬ
──Eveさん、否伊武さん……深司くんと会話した私はあまりの緊張度に「本日はこれで!」と周り右して逃げた。
光くんや十次くんの時よりもうまく口が回らなかったのは、きっと他校の正門前という場所もよくなかったと思う。

そして逃げた先にちーちゃんとタマちゃん。さらには若くんやジロー先輩たちがいて心底驚いた。
タマちゃんがやはり勘違いをしていたみたいだったけれど、私の身を心配してくれたようで素直に嬉しい。

ハンバーガーまでご馳走になってしまって、少し恐縮だったけど、ちーちゃんが気にしない方がいいと言ってくれたので有り難く胃の中に収めた。晩御飯はもうこれで済まそうと思う。

その後は鳳くんにマンション前まで送ってもらったわけだが、本当に彼はなんて気の利く人なんだろうか。
きっと鳳くんもモテるんだろうな。でも告白を断るにしても、丁重に言葉を選んで相手を傷つけないようにしそうだ。それは告白した子が恐縮しそうなぐらいだと思う。否まぁ私の想像だけど。





「……さて後一時間くらいで家を出なければいけないわけですが」

それから一晩経過し、朝食どころか昼食も食べ終わった時間。

私はひたすら姿見の鏡の前で唸っている。

理由は単純。
和太鼓コンサートの時間が迫ってきているからである。
あの真田さんと一緒なのだ。普段の服よりも少し大人っぽい方が浮かないんじゃないだろうかとか、でもそれって意識しすぎなんじゃないのかとか。もう色々パニックである。


《流夏ちゃん助けてください。私は何を着ていけばいいですか?》

《胴着か袴。というか今からまたタイム計るから。メールは返さないよ》

「のぉおう……っ」

なんだ胴着か袴って。
床に崩れ落ちながら、きっと流夏ちゃんと行く予定だった和太鼓コンサートを真田さんと行くことになったことを怒ってらっしゃるんだなと涙を拭った。でも行けなくなったのは流夏ちゃんだから、ほんのちょっと理不尽だ。

取りあえず合宿でスカートはけしからんと言われたので、流夏ちゃんがシルエットを気に入っているからとプレゼントしてくれたキャロットパンツにしよう。

「……流夏ちゃん風コーデみたいになったでござる」

いつもよりボーイッシュな雰囲気になってしまった気がするが、もう時間がない。自分的に違和感は残るが、仕方がない。
私はいつもとは違う悪魔の着ぐるみを着たパンダが描かれているリュックを背負って部屋から飛び出したのだった。





「おぉおお待たせっげほぉっごほっ」

「お落ち着け!深呼吸せんか馬鹿者!」

「……はーすーはーすぅ……お待たせ致しましたすみません」

「……別に待ってはいないが」

(……そういえば、合宿中はずっとジャージだったっけ。……真田さんの私服、意外と普通だ。まぁ絶対中学生じゃなくて大学生ぐらいに見えるけども)

(……夢野の今日の格好は小学生みたいだな……む、本人には言わない方がいいか)

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