どうしてこうも……
「……もう一度説明を求めていいか?」

俺が眉間に深く皺を刻みつけながらそう言えば、目の前の及川は真剣な顔で「詩織ちゃんの恋を応援しましょう」と熱く握り拳を振った。
助けを求めるように視線を隣で呆れ顔の篠山に向ける。篠山は小さく溜め息を吐いてから、鼻息荒く何やら語り始めた及川を押しのけた。

「……まぁ私も直接見たわけじゃないんだけれど、昨日タマと詩織が放課後に雑貨屋へ買い物に行ったの」

そこから公園へ向かい、クレープを買った。その時に目があった男がいて、及川がいうには夢野はその男が駆けていったストリートテニス場に行きたがったらしい。が、二人が到着した頃にはその男はおらず、玉林中の男子がテニスをしているだけ。ちなみにそいつらが玉林中のやつらだとなぜ知っているかといいと、夢野と及川が声をかけられたからだという。

「……それで何故今の状況になるんだ」

「それは、俺だけじゃ頼りないからだって言われたC〜!マジショックなんだけどー」

隣で唇を尖らせているのは芥川さんだ。
その後ろには、苦笑している鳳といまいち状況が掴めていない宍戸さんがいる。

そして俺たちは全員で電柱の陰を移動しながら、前を歩く夢野の後ろをつけていた。

「だから、詩織ちゃんが一目惚れした子は、不動峰中の男の子なの!見て!放課後になった瞬間に不動峰中に向かう詩織ちゃんを!あれは本気よ〜っ」

普段ゆっくり話すくせに、こういう話題の時だけはやたら早口でまくし立てる及川に頭が痛くなってくる。

「……なんで俺らが尾行に付き添わなきゃいけねぇんだ?」

宍戸さんの尤もな意見に首を縦に振ったら、及川と芥川さんが「それは!」と大声を上げた。が、篠山にしっと人差し指を唇に当てた姿で注意され、言葉を飲み込む。

「……不動峰中テニス部といえば、昨年暴力沙汰で大会出場停止を食らったところよ」

「成る程。夢野さんの身が心配だってことだね。だから俺らに声をかけたってことか。宍戸さん、しっかり見守りましょう!」

爽やかに笑った鳳は何故か自信満々に宍戸さんに振り返っていたが、当の本人は困惑顔だった。
そりゃそうだろう。たまたま部活がなかったが、自主練ぐらいはできる。宍戸さんならば、走り込むはずだ。

大体、夢野が一目惚れだと?
馬鹿馬鹿しい。本当だったとしても、それがどうしたというんだ。
あの馬鹿なら一人で大丈夫だろう。というか、アイツに一目惚れなんて似合わな過ぎないか。

……あぁ、無性にイライラする。
ついて来るべきではなかった。用事があると言って逃げれば良かった。
なのに何故それが出来なかったんだろうか。


「……あ、ここが不動峰中学」

「オロオロしてる詩織ちゃん、マジ可愛E〜っ!でも、相手が出てきたら耐えれないかも知れないC〜」

「……つーか、尾行してる俺ら激ダサ……」

三者三様の反応に俺は小さくため息をついた。及川と篠山が一瞬俺の表情を盗み見していたような気がしたが、よくわからない。

ただいえることは

……その時俺は、夢野から目が離せなくなっていたってことだ。

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