耳に残る君の音
──今日も、放課後になっても屋上に詩織ちゃんは来なかった。

昼休みに忍足から聞いたけれど、昨日は詩織ちゃんが神奈川に行かなきゃいけない用事があったらしい。

でも、今日は……?



「……つまんなE〜」

ぽつりと呟いた独り言は、俺以外に誰もいない屋上の冷たいコンクリートの上に落ちた。


きっとまた何か用事があるんだとは思う。
だけど、やっぱり会えないのは落ち込む。
その理由はまだよくわからないから、思いっきり伸びをした。


「……うんっ、練習頑張ろっ」

耳に残る詩織ちゃんのヴァイオリンの音を思い出して、両頬をぱんっと叩く。


俺がいっぱい練習したら、また「ジロー先輩格好良かったです!」って誉めてくれるよね。

……マジなんでだろ〜。
よくわかんないけど、合宿の時に気づいたんだ〜。

俺、たぶん詩織ちゃんを独り占めしたい。


君が奏でる音が好き。
君の独り言が好き。
君の笑顔が好き。

でもその好きがどういう好きなのかは、俺にだってわかんない。

だけど、大好きな丸井くんにもイラってしちゃったC……


こんな気持ち初めてだから、どうしたらいいのかわかんないや。


「……明日は会えるといいなぁ〜」

真上を見上げたら、羊みたいな雲とパンダみたいな雲が仲良く寄り添っているように見えて、ちょっぴり元気が出た。

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