予感
──連休明けの水曜日つーこともあって、クラスメートの話題は休日どこに出掛けてたがほとんどやった。
運動部のやつらでも一日は休みがあったらしい。
それにいつもなら羨ましいなぁとなるところやけど、今回の合宿に関してはそんな気持ちにはなられへんかった。

なかなかオモロい合宿やと思えたんは、間違いなく詩織ちゃんのおかげやろう。




「侑士ー!今日の練習休みって本当かよ」

「あー、すまんなぁ。岳人。親父がなぁ神奈川の病院に勤める友人に届けて欲しい書類があるらしくってなぁ……面倒やねんけど、がっくんもついてきてくれへん?」

「いくわけないじゃん」

後半をワザと可愛い子ぶった口調で言ってみたが、スルーされた挙げ句に「ま、頑張れよー」と背中を叩かれた。そして薄情な相方の背中は見る見るうちに小さくなっていく。

なんや悲しい気分になりながら、はぁっと溜め息をこぼして校門に向かった。


「……あ。忍足先輩だ……死んだふりした方がいいのかな……」

「それは熊に遭遇した時の対処法や。しかも間違った知識やねんで?」

対俺用でも間違いや。俺の前でそれやったらキスしたるからな。と付け足せば、校門を出ようとしていた詩織ちゃんは青い顔でわざとらしい笑い方をした。

あかん、ひきつりすぎてて可愛い顔が台無しや。不気味な感じになっとる。

「……それで自分、今からどこ行くん?」

俺と同じ駅に向かっているらしい詩織ちゃんに続けて話しかけた。
榊監督と跡部の話を聞いただけやけど、どうも詩織ちゃんは学園から近い距離のマンションに一人暮らししとるらしい。なら、駅に向かうんは変やろ?……まぁ、駅近くかもしれへんけど。

「あー……私、今から神奈川の病院に行かなきゃダメなんです。今東京の大学病院に通院してるんですけど、神奈川で入院してた頃の病院にあるデータが必要らしくて」

「奇遇やなぁ。俺も父親の頼み事で、神奈川の病院にお使いやねん」

口をポカンと開きっぱなしのまま、詩織ちゃんが俺をまじまじと眺めてくる。

せーので神奈川の病院の名前口にしよかと笑えば、こくこくと首を縦に振っていた。


……なんとなく

ただなんとなくやけど、たぶん……否、きっと間違いなく同じ病院の名前やろうなと確信していた。

だからやろうか。

声がハモった時に頭ん中過ぎったんは『運命やな』っつー、恥ずかしい台詞で。

……この夏は、いつもよりも熱いやろうなと笑っってもうたんや。

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