*破廉恥狂想曲

――いきなりですが、只今私は修学旅行でやってきた民宿の大浴場にいます。

私以外誰もいません。

何故かというと、私はスキー実習中に転んで頭を打ったため、軽く気を失っていたのです。

はい、お恥ずかしいばかりです……

そのため、女子の入浴時間から大幅にズレたというわけで……

勿論、男子も入浴をすでに終えているので、時間を気にせずのんびりしてオッケーなんですよ。

怪我の功名……とでもいうのでしょうか。
ラッキーです。




「旦那、どう見つかった?」

「否……もしかしたら、脱衣場ではなく……浴場なのかもしれぬ」

そんな声が聞こえてきて、私は一気に青くなりました。

脱衣場へと続く大きな曇りガラスの向こう側にいくつかの人影が見えます。


あの声、あの口調……っ

「……っ、おい、真田。wait!!……この着替え、中に人がいるんじゃねぇか?」

「あ、本当だー。梵、よく見つけたねぇ…………、……こ、このバストサイズはっ」

い、いやぁぁぁあっ

死ぬかも、死んじゃう、死にたいーっ!

聞き覚えのある声たちに私の頭の中はパニックです。

いえ、っていうか、着替え!下着っ!見られた、触られたぁっ!


「……夢子ちゃん?中にいるの?」

暫くの沈黙の後、どこか戸惑ったような声が聞こえる。

間違いなく、これは慶次さんの声だ。

「な、ななな何を?!」

焦ったような声は幸村くんなんだろう。


『……は、はい。あ、あの、私、もう出ますから探し物でしたら、その後にお願いします、ごめんなさい』

湯船に浸かりながら、私は一生懸命大声で返した。

このまま、入ってこられては困る。
本当に困ります。


「……そ、そうだねー。ほ、ほら、梵や猿飛くんたち、出ようよ」

「Ah,……OK」

「まぁ、惜しいけど仕方がないよねー。俺様の夢子ちゃんの裸、他の旦那らには見られたくないしー」

佐助くんの言葉にはもう唖然とした。

まるで自分のものみたいに口にしないでください。佐助くんって本当によくわからない。


『…………』

すぐに人の気配が脱衣場から無くなった。

ホッとして私は湯から出ると、足早に脱衣場へ向かう。

あまりのんびりしていると、またあの人たちが入ってくるかもしれませんし!


『ひぃ?!』

急いだ私は何かを踏んづけた。

何かは石鹸。たぶんこれが幸村くんの探し物だろう。だって六文銭が描かれていますから。

『きゃ!!うぐ、痛い……』

すってんころりと転びました。
お恥ずかしい。

頭は打たなかったのが幸いでしょうか……

「「「夢子ちゃん?!」」」
「夢子殿っ」
「Honey?!」

前言撤回。
これなら頭を打って気絶した方が幸せでした。

勢いよく開けられた曇りガラスの戸から、五人の顔がはっきりと見え、真っ裸で尻餅をついている私は、一体どんな痴女でしょうか。

否、これは一体なんの罰ゲームですか?!

『い、いっ』
「は、はれっ」

見る見るうちに真っ赤になる私。

『いやぁああぁっ!』
「破廉恥ぃーっ?!」

悲鳴を上げた私の前に真っ赤な血飛沫が。


…………大惨事です。
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