*守護する者

――聞こえた会話内容に聞き耳を立てた。

「……夢子様、では明日の十時半でよろしいでしょうか」

『は、はい!鶴姫ちゃん!』

「んじゃ、夢子。明日は俺もついて行くことになったが、よろしくな!」

「うぅ、どうしてアナタも……」

「サヤカに頼まれたんだから、仕方ねぇだろ。大体、お前が悪いだろ」

いつものように通っているメイド喫茶。

ここ毎日になっているのは夢子目当てだが、そんないつもと違う会話がなされているのは、厨房の中だ。

どうやら、明日は夢子は休みらしい。

そして鶴姫も、あの厨房の男も。

そこまでは全然問題ないのだが、その三人が一緒に遊びに出掛けるというのだから、大問題だ。

あの鶴姫というメイドと出かけようが何も問題はない。
否、女二人でなど、軟派されたり変な宗教に引っかかるのではと、心配事は絶えぬが……

それよりも、今の問題はあの男だろう。

何故、俺の夢子が、他の男と休日に出掛けないといけないのだ。
ふざけるな。





『元親先輩!こちらです!』

次の日、自宅から可愛らしく着飾った夢子が、鶴姫とあの男――元親と合流した。

「か、可愛いぜ、夢子」

顔を赤らめるな。
まだ中身の詰まったビール缶を投げつけてやろうか。銀髪め。

「さぁ!夢子様行きましょうっ」

鶴姫が元親を無視して夢子に腕を絡めて歩き出す。

鶴姫よくやった。
だが、その腕組みは羨ましすぎる。

女じゃなければ、うっかり石を投げつけていたところだ。

というか、元親は復活が早い。
さり気に夢子の横を歩いているのが、非常にムカついた。

取り敢えず、三人が人混みをかき分けて歩いている時に、どさくさに紛れて元親の足を踏んでやる。

「〜〜っ」

うずくまった大男の背中はなかなか面白かった。

『元親先輩大丈夫ですか?!』

が、これは大失敗だった。



その後、映画館で映画を見ている間に、飲んでいた元親の炭酸飲料を熱々の珈琲にすり替えたり

歩いている時に夢子の手を握ろうとしているのをぶつかって邪魔したり。


取り敢えず、フラグはすべて壊してやった。

……夢子の操は俺が守る。
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