ONE PIECE | ナノ


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「なぁなぁロビン、これうめぇぞ!」
リンゴ飴を片手にニコニコと笑う。リンゴ飴って確か少しずつかじっていくものだと思っていたけれど。そんなじっくり味わうなんてことをルフィがするわけなかった。一口で丸々口に入れ、ガリゴリ。せっかくのリンゴ飴なのに勿体ない、と苦笑。
「ロビンはなんか食わねぇのか?お前さっきパイ食っただけだろ」
「私はいいのよ。雰囲気を楽しめれば」
「ふうん。そっか。でも雰囲気楽しむならやっぱ食ったり、遊んだりした方が楽しめんじゃねーのか?」
「お祭りをこうして仲間とまわれるだけでもいいの」
「……そういうもんなのか?あ!あれとか面白そうだな!」
ルフィは近くにある射撃を指差す。人混みのなか、そこまで行くにはなかなか難しいんじゃ……。
「ほら、手貸せ」
不意にぐいっと半ば強引に手を引かれる。握られた手からじわじわと熱が籠る。ルフィに顔が見えるわけでもないのに、つい顔を背けてしまう。
「あっ、」
ただはぐれないように手を繋いでくれているだけだと分かっているのに。それが嬉しくて堪らない。こんな些細なことで喜ぶなんて平和ボケもいいところね。
「おい、おっさん!二人分よろしくな」
「はいよー!!」
商売慣れした声と共にちゃりん、と快い音がルフィの手からした。もしかしてこれは私の分まで払ってくれたのだろうか。
「あ、ルフィお金、」
「ん?あーいいよいいよ。んなことより早くやろうぜ!」
ほいっ、と銃を渡される。ルフィってそんなに気前が良かったかしら。別に特別ケチだと感じたことがあるわけではないけれど。
まあ良い。自分も楽しもう、と目の前のお菓子を見据える。どれがいいかしら。あ、あのお菓子綺麗。やや右下にある透明な小箱に狙いを定める。
「……ん、」
一発目。掠りこそしたものの狙ったお菓子は落ちない。なかなか難しい。普段銃なんて扱わないからか、弾を込めるのにも時間を有する。ルフィの方を見ると、案の定上手くいってないようで手こずっていた。
「難しいなー!なかなか落ちねぇ」
「射撃なんて、ウソップがいたら一発よね」
銃口を狙いのお菓子から外し一休憩。といってもまだ一発しか撃っていないけれど。
「んー、サンジとかも何気に得意そうだけどな!アイツはこういうのまずやんねーのかな」
「確かにサンジって器用よね。でも自分からはやらなそう」
「だな!……あと二発かー。落とせるかなー」
「私もあと二発……ね。もしもお菓子を撃てたらプレゼントするわ」
「おう!」
会話を中断し、再び銃を構える。二発目でもやはり慣れない。まあ、当たり前と言えば当たり前だけれど。やはり思い通りには当たらなくて、お菓子を少しかすっただけ。そこまで欲しいと思ったものではなかったけれど、なかなか落とせないとなるとどうしようもなく落としたくなる。変に意地を張り出した自分に呆れる。
「姉ちゃん、もうちょい左に構えた方がいいぜ。姉ちゃんの弾、若干だが右に寄ってる」
屋台のおじさんがアドバイスをくれる。確かに先程の二発は右側に当たっていた。よく見ているのね。
おじさんのアドバイス通りにやや左に構える。三発目。軽い銃声と共に、二発目までとは違ったお菓子の小箱が落ちる音。
「姉ちゃんやったな!ほら」
おじさんが落としたお菓子を拾ってくれた。こんな小さなお菓子に夢中になるとは。そんな自分に呆れつつも、意外とこういう遊びが好きなのかもしれない。幼少期なんてほとんど隠れて本ばかり読んでいたから新鮮に感じた。
「ロビン取れたのか!」
隣でやっていた筈のルフィが声をかけてくる。ルフィも片手に何か持ってるみたい。なんとか取れたんだろう。
「えぇ。ハイ、ルフィどうぞ」
「おう!ありがとな!!あ、ロビン……」
不意に背中を小突かれる。何、と振り返ると今までとは比べ物にならないほどの人混み。なんで今まで気づかなかったのか。どれだけ射撃に夢中になっていたの。
今は自分に呆れている場合じゃない。こんなところではぐれたりなんかしたら最悪だ。慌てて振り返るともうそこには、いた筈のルフィはいなかった。
「ルフィ──?」
呟くも虚しく、返事は返ってこない。しかし、大声をあげたりなんかしたら、海軍までもが自分達の正体に気づいてしまう。億もの賞金首、さすがに穏やかそうな海兵でも見逃したりなんかしないだろう。こういうとき海賊って不便。
取りあえず高いところから探そう、と屋台の裏側に見えた丘を目指す。けれど、人混みも人混み。着なれていない着物のせいもあり、全く思ったように動けない。
「わっしょーい!!わっしょーい!?」
「わっしょいわっしょーいっ!!」
賑やかな声にガシャン、ガシャンと大きな鈴の音。昔何かの本で読んだことがある。これは確か『御神輿おみこし 』。その街で崇めている神様に感謝の気持ちをこめて御神輿を担ぐんだとか。その街によって、神様の怒りを鎮めたりと意味合いが違うこともあるが、御神輿を担ぐこと自体はさして変わりがない。
なるほど。御神輿のための人混みか。ならば、これはどんどん前へ押されているのでは。
体をひね り、少しずつ左へ、左へとずれていく。能力を使えばこんなところすぐに抜けれるというのに。普通の街並みで使ったりなんかしたら、怪しまれるのは当然。この街ではもう祭りなんて楽しんでる場合じゃない。それにナミには念を押されているのだ。
「早く上に、」
呟いた瞬間手を引かれる。突然のことに前のめりに倒れる。倒れたことで人混みからは抜けられたが、どうやら喜んでるような場合じゃないらしい。
「おい、ちょっと面貸せや姉ちゃん」

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