ONE PIECE | ナノ


V

「なぁ、ロビン」
黙々と歩き進んでいると後ろを歩いているウソップに声を掛けられた。
「道のり長すぎじゃねぇか?」
「そうだよなぁ!俺も、俺もそれ思ってたんだ!」
ウソップの声に同調するチョッパー。確かにそう。向こうに光が見えているからそんなにかからないと思っていたのだけれど。光を見つけてからもう一時間は経っているだろう。
「もうすぐだとは思うけれど……」
「そういや、ジュリアの言ってた賊とやらはいねぇんだな?」
出掛ける前に注意されたものの、賊……というかまず私たち以外に人の気配を感じない。まぁ、賊はたまに出る、と言う程度だったから普段はいないのだろう。
「出来れば今は出会いたくないですよね〜」
「そうだなぁ。俺はともかく、お前らは浴衣で動きずれぇだろうし。今戦闘となればこっちは不利ってこったな」
ブルックとフランキーの言う通り。フランキーはジュリアの家に置いてあった浴衣ではとてもじゃないが、着ることは出来ず、はっぴを羽織っているだけ。しかし、フランキー以外はみんな浴衣を着ている。私やウソップのように激しく動かない戦闘術の場合はともかく、ルフィやサンジたちは明らかに不利だろう。
それに浴衣以外にも理由はある。祭りとなれば当然人は多い筈。近くの雑木林で騒動があれば、注目を浴びるに決まっている。警備に海軍がいないとも限らないし、気を付けなければならない。
「そうなのよねぇ。私も一応護身用にクリマ・タクトは持ってきたけど、浴衣着てちゃ上手く動けないわ」
「大丈夫さ!何かあったときは俺が守るからね!!」
「動きづらいのはお前もじゃねぇのか?」
目をハートにしながら回転しだすサンジに、天然ながら水を差すルフィ。正論なんだけどね。
「あっ、あれ!」
突然先頭を歩いていたルフィが立ち止まる。周りも顔を次々に上げると共に驚きと感嘆の声を漏らした。
「すっげぇ!!!」
それもその筈。この景色はとても祭りという規模ではなかったからだ。もはや、フェスティバル、宴会、国単位での祭典かというほど。ジュリアは軽く言っていたが、この島の住人にとってはこの祭りは大したものではないのだろうか。
「……うっは、すげぇな……。祭りの規模もだけど、みんな綺麗な人ばっかだぜ?」
「本当ね……。可愛いとかかっこいいじゃなくて、なんか……顔が整っている、とでもいうのかしら。あ、あれ海軍よね?背中に、ほら」
この島のルールだからか、海軍もいつもの制服姿ではなく、浴衣を着ているようだ。背中に『正義』の字があるのは相変わらずだけれど。
今まで見てきた海軍の中でこの島の海軍はやけに穏やかそうだ。祭りの雰囲気に呑まれたのか、はたまた元々穏和な人なのか。ニコニコと住人に話し掛けたり、屋台をのんびりと見て回ったりと警備といえよりも単に楽しんでいるだけに見える。
「ああ!浴衣の着こなしもスゴいですね!慣れてくるとアレンジを加えたくなる気持ち、私とてもよく分かりますっ!」
ヨホホホホホ、と軽快に笑う。芸術家として嬉しいのだろう。
それにしても確かに凄い。元は同じ物な筈なのに、ここまでアレンジできるなんて。勿論、私たちのようにそのまま浴衣を着崩したりせずに着ている人もいる。が、胸元が大胆に開いていたり、裾にレースがあしらわれていたり。丈を膝上まで短くし、一種のドレスのように着ている人もいた。男性も同じとは言わないが、アレンジは加えている人が過半数。気後れというよりも、ただただ感心するばかりだった。
「こんだけ店あったら食い物もたくさんあるよな!」
「またお前は食い物ばっかかよ……まぁ、らしいといっちゃあそうなんだがな」
「ルフィはどこ行っても変わんないわよ。取りあえずこんなとこで突っ立ってたってどうしようもないからペア決めましょ。ペア」
「ん?ペアってなんのだ?」
よく分からないのかチョッパーが首を傾げる。
「この大人数で行動するのには無理があるでしょ?海軍も少なからずいるから目立つのは良くないわ。だから、少人数のペアを決めてそれぞれ楽しみましょ、……ってことよね、ナミ?」
「そうよ。あんた達が単独行動して良いことなんて起きたことないもの!心配でしょうがないわよ」
結果巻き込まれるのはこちらなのだから、と溜め息を吐く。ナミの気苦労を考えれば、言われても仕方がないものだった。
「えっと、ウソップ、チョッパー、フランキーで1ペア、ブルックとサンジ君は私と。ルフィはロビンに任せるわね」
さらっと言うあたり、最初からこのペアは決めていたよう。大体バランス良く分けたみたいで、みんな文句はないようだった。……あっても言えるわけないけれど。
「さ、こっからは各自自由行動よ!問題だけは起こさないでよね!!」

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