ONE PIECE | ナノ


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雑木林の目の前で思わず立ち止まる。
「やっぱりでけぇな……」
見つけられるだろうか、と柄にもなく不安になってしまう。しかし、そんな女々しく不安に襲われている場合じゃない。まだ諦めるのには早い。早く、一刻も早くロビンを探さなくては。
「おーーい!ロビーン!」
早速雑木林の中に入り、声を張り上げて名前を呼ぶ。虚しく木霊するだけでロビンからの返事はない。
周りを見渡すが、見えるのはただただ木、木、木。行きも通ったところではあるが、改めて見ると木以外に本当に何もないところだ。動物もいないのでは、冒険だと胸を踊らせることもない。
「ここじゃねぇのかなぁー。」
開始数分だが、人気ひとけ のないことに焦りを覚える。もしも、他の場所でロビンが既に酷い目を遭わされていたら。もしも、もう海軍に引き渡されていたら。みんなに顔向けなんてできない。いや、その前にロビンが自分の手の届かないところに行ってしまうことが、何よりも嫌だった。悔しさと苛立ちを抑えるかのように拳をギュッと握る。
しばらく歩いてふと空を見上げる。雑木林に入ってもうどれくらい経っただろうか。探し始めた頃にはまだ高かった日が、もう沈もうとしている。後ろを振り返ってももう街は見えないし、それどころか、木以外のものは一切と言っていいほど何もなかった。心の中でロビン、ロビンと呟きながら早歩きで探し回る。
「あっはははははははははははははは!!!!」
どこからか笑い声が聞こえる。楽しげに笑ってるわけではなさそうなだけに、若干怯む。いやいや怯んでる場合じゃねぇんだ、俺。しっかりしろ。もしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれない。いや、もしかしたらロビンと一緒にいる人かもしれない。ほら、ちょっとおかしな奴っているだろ。自分に言い聞かせると、なんだか少し浮き足立ってきた。そんなにロビンに会えるのが嬉しい?いやいや、めちゃくちゃ嬉しい!!
……って早く見つけてやんなきゃ何一つ始まらないのに俺は馬鹿か。……今更だな。うん。手遅れ手遅れ。
声のする方へ忍び足で駆け寄ると
「……ロビン!!!……あ、やべ」
忍び足で駆け寄った意味を全て台無しにし、ついでに言うと、ロビンは何者かに捕まっていた。
「ルフィ?!」
驚くロビン。だが、俺一人でいることに不安を覚えたのかすぐに戸惑いの色をみせる。他の人はどうしたの、と。
「なんでアンタがここにいるんですかッ!!」
微かに身じろぎをした相手を目で追う。え、
「お前ッ!!」
名前はなんだっけなと慌てて思い出そうとするが、無念。俺が思い出せるわけがなかった。どう頑張ったって記憶力がねぇもんはしょうがねぇ。
「ロビンお前そいつといたのかー。一言掛けてくれればこんなに探したりしなかったのに。一言言えよなぁー!」
ったくもー、とニコニコ声を掛けると、
「ルフィ違うの、ジュリアは賞金稼ぎだったのよ!拐われたの、ジュリアとその仲間に!」
ジュリアが賞金稼ぎ?ロビンを拐った?ジュリアが?この場にいる厳つい男たちが?
ロビンの言葉がモヤモヤと頭を埋め尽くす。何が何だかイマイチわかんねぇと思考停止してしまうが、そういえばナミが賞金稼ぎがいるから気を付けろと言っていた。ていうか、だからサンジに怒られたんだっけか。危ねぇ、完全に忘れてた。ロビンを探すことしか頭に残ってなかった。
じゃあ、ジュリアが賞金稼ぎだって、そういうことでいいんだよな?
「て、ロビンそれ海楼石じゃねぇか!」
「そうなの、ごめんなさいルフィ」
カシャンと手首に絡みつく錠を地面に打ち付けてみせるロビン。なんとなくロビンが捕まってしまった理由も納得。それ本当に力抜けるもんなー。顔をしかめてみせるとロビンも苦笑い。
「さーて、どうすっかなー」
ノープランもノープラン。あ、いつもそうだっけか。ぐるぐると腕を回しながら俺なりに考えようとするが。うん、俺にはそんなの向いてねぇんだった。いっそこのままロビンを抱き抱えていくというのも1つの手だとは思うが、錠の鍵がないと こいつらを撒いた後も面倒になりそうだ。ロビンも不便だろうし。何かねぇのか、とロビンを見つめたものの、困った顔をされただけだった。
「やたらと高い懸賞金掛けられてるくせして、実際大したことないじゃないですか。ロビンさんたら大口叩いておいて、これじゃ錠は絶対に外れませんよ?ルフィさんも海楼石、駄目なんですよねぇ?」
さっきまで焦りの色しかなかったジュリアの顔はみるみるうちに明るく、とは言わないな。ニヤニヤニタニタ。こいつってこんな悪い奴だったか?思いっきり首を傾げると、ロビンにまた苦笑された。なんでだよ。
「錠は解けねぇと思うけど、お前らぶっ飛ばすくらいなら簡単だぞ?」
能力使わなくてもこいつらぐらい大丈夫だろう。女一人に少し体格の良い男三人。生憎能力者はいなさそうだ。
「余裕かましてんじゃねぇよ麦わら。考えてみろ、お前今浴衣来てるんだぜ?いつも通りに動けるとでも思ってんのか」
「んー浴衣なー。動かなかったら……ハンデにもなりゃしねぇけどな」
目を見開いて、力を込める。俗に言う覇王色の覇気。
これぐらいの相手なら、わざわざ戦う必要もない。
「……ッ!」
バタバタと倒れる人を前に、ロビンは少し驚いた顔をした。
「……ありがとう。ルフィ。申し訳ないのだけれど、錠の鍵を探してくれないかしら」
「ん、鍵か。どこにあんだろーなぁ。おい、おいジュリア!」
気を失って倒れているジュリアの肩を持って揺さぶる。ジュリアの体はガクガクと揺れるだけで、何の反応も示さない。完全に気絶してんなー。
「あなたがやったことでしょう?」
くすくすとおかしげに笑うロビン。ジュリアまでやる必要はなかったことに今更ながら気がつく。
「しくったなー。鍵だけ貰えば良かったなー」
頭をポリポリと掻いて、棒立ちでいると不意に後ろから聞き慣れた声。
「ルフィー!!って、ロビンも!見つかったのね、良かったわ」
駆け足でやってきたナミが驚いた顔をする。そうだぞ、ナミ。俺、ちゃんと見つけたんだ。
「て、あれ?錠したまんまだけど。もしかしてアンタまた鍵見つける前にやっちゃったわけ?」
「しししっ」
「笑い事じゃないわよっ!!」
ビシッと(物理的にも)突っ込まれてついよろける。
「ん、ジュリアは共犯だったの?完全に気絶しちゃってるけど」
「ええ、そうよ」
ナミの言葉を静かに肯定する。悪い奴には見えなかったんだけどなー。おれたちに浴衣?だっけ?貸してくれたし。
「まぁいいわ。鍵を探せばいいんでしょ?こういうときの鍵っていうのは大体隠す場所限られてんのよ。簡単簡単」
軽く言ってのけるだけあって、数分でナミは鍵を探しだしてみせた。
「はい、これで大丈夫よ」
カチャ、と軽く音がしてロビンの錠が外れる。良かったなーロビン。
「ありがとう、二人とも。みんなは?」
「あぁ、みんななら船に戻ったわよ。お祭りはこれから本格的に始まるらしいけど、賞金稼ぎと海軍がいるんじゃろくに楽しめないでしょ。戻ったらすぐにでも出航予定よ」
「えぇー、俺もうちょっとここにいたかったんだけどなー!」
「しょうがないでしょ!面倒なことに巻き込まれる前に出るべきよ。少なくとも既にこうやって賞金稼ぎに捕まってたんだから。2度目がないだなんて誰が言い切れんのよ」
ナミの言っていることが正しいのは分かっているが、名残惜しい気持ちはある。尚も駄々を捏ねようとする俺を見かねたのか、ロビンがここで1つ提案。
「ごめんなさい、少し時間をくれないかしら?こうして足を引っ張った身で申し訳ないけれど、最後にお祭りのあの通りを通る分だけの時間でいいの。ルフィの気持ちも収まらなさそうだし、どうかしら。勿論ナミは先に帰ってもらっても構わないわ」
おお、ナイス提案!
ナミは渋々、といった感じで首を縦に振ってくれた。
「その代わり、今度は絶対にはぐれたりしないでよ。あと、必ずすぐに帰ってくること!」
分かったわね!と念を押すナミに首が折れるんじゃないかってくらいに頷く。
「さ、行こっか、ロビン!」
静かに頷いたロビンは心なしか嬉しそうに見えた。

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