ONE PIECE | ナノ


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ナミとは林を出てすぐに別れた。つまり、ここからは二人きり。別に二人で行動することぐらい、なんてことないし、おそらくルフィなんて気にもしてない。ただ、慣れない着物のせいか、はたまた初めて一人じゃないお祭りだからか。胸がドキドキしてしまう。
なんとか落ち着かせようと、いい歳なんだから、と自分に言い聞かせる。それでもソワソワとしてしまうのは相手がルフィだからなのだろうか。
「ん!さっきここ何もなかったのに!」
「あら、ホントだわ」
ルフィの指差す方を見ると、で空いていたスペースに屋台があった。さっきよりも賑やかなのは屋台の数が増えたせいもあるんだろう。
「おぉ!お兄さん、彼女さんかい?どうよ、今ならおまけしちゃうぜ?」
屋台のおじさんが明るく手に持ったチョコバナナとやらを振り回す。いや売り物を振り回すって……。
「じゃ、これくれよ、おじさん!」
ルフィが既にチョコバナナを握った状態で答える。
「はーいまいどあり〜!ほら、お姉さんは?」
「これお願い」
「はい、どうぞー。お代は1つ分だけで構わないからな!……楽しんできなよ!」
お代を払って、屋台から去ろうとすると、おじさんは明るく手を振る。愛想の良い感じはどこかルフィと似てる気もする。なんて考えてしまうからきっと私は大分重症だ。
「うっめえ!」
これもやっぱり一口でパクリ。チョコバナナだからりんご飴よりは食べやすいだろうけど。もっと堪能すればいいのに。
私も食べようと、一口かじると口の中にふわっとバナナの甘い味が広がる。ほんのり温かいチョコレートも美味しい。
「やっぱ屋台はおじさんとかさ、おっちゃんがやってるとうめぇよな」
「ふふふ、それは偏見だわ。ほら、あそこの屋台のお姉さんなんか」
「……うっわあすげぇ!あの量の肉を二人で焼いてる!ちょっとロビン行こうぜ」
また食べ物。さっきもかなりの量を食べていたはずなのに、さすがルフィ。駆け足で付いていくと、お姉さんがにっこりと迎えてくれた。
「あら、素敵なカップルさんが来たわよ」
「ホントだわ。とっても素敵ね。お客さん、どれにします?」
「そこの肉1つくれ!」
そう言うと、お姉さんは少し驚いた顔をしたもののすぐさまにっこり笑顔に戻る。
「あらあら、これはお目が高い。このお肉、仕入れた中で一番良いお肉らしくて。商人さんにもとっても勧められたんですよ。味は保証しますわ」
言われて見ると、確かにボリュームはあるものの美味しそうだった。口から止めどなく涎を垂らすルフィにも頷ける。
「お兄さんのかっこよさとお姉さんの美しさに負けて200ベリーで良いですわ」
「ではお言葉に甘えて。あなた達も十分に綺麗よ」
そう言いながら言われた分のお金を手渡す。
頭に花飾りをつけて、着物を上手に気崩しているお姉さん二人は、お世辞抜きにしても綺麗。だからか、屋台を力強くやっているとギャップもあって、目を惹くんだろう。
「ありがとうございます。でもお姉さんには負けますわ。ほら、お兄さんどうぞ」
ルフィは笑いながらお礼を言うと、受け取るなり肉にかぶり付く。美味しい?と訪ねるとグッと手をつきだした。屋台のお姉さんも満足そう。そりゃあこれだけ
美味しそうに食べられたら、売る方も嬉しいだろう。
「そろそろいい時間だし、食べ終わったら船に戻る?」
「んー、そうだな!既に待たせてんだもんな」
そう言い終わるや否や、ペロリと一口で肉をたいらげた。いくら普段の食べっぷりを見慣れているとはいえ、さすがに驚いた。

船に向かって歩き出して、しばらく経った頃。だんだん遠くなっていく町に寂しさを感じる。別に愛着が湧いたわけでもないけれど、二人で過ごした時間がもう終わると考えるとやっぱり寂しい。寂しいというよりは、「勿体ない」に近い気もするが。
「ルフィ、今日はありがとう。それと……、迷惑かけてごめんなさいね?」
そう言うと、ルフィは何言ってんだよ、と首を傾げる。
「迷惑だなんて思ってねぇよ。仲間なんだから当たり前だろ?」
あたかも当然だと口を尖らせて言う顔に少し笑ってしまう。あたたかい言葉に嬉しくなると同時に、本当にこの船長で良かったと痛感する。
「それに、俺も悪かった。人混みだからとはいえ、ロビンを見失うなんてさ。……俺、ロビンがいなくなったときすっげぇ焦ったんだ。俺から離れるのも、手の届かないところに行っちまうのも嫌なのに、全然見つけられなくてさ。悔しかった」
さっきとはうって変わって真剣な表情になるルフィに少しドキリとする。以前のことがあるから、さすがのルフィも不安になったんだろうか。その気持ちに少し嬉しいと思ってしまうのは不謹慎だろうか。
「心配かけて、ごめんなさい。でも心配しないで。あなたから離れるなんて真似、もう二度としないわ」
「そっか。ロビンから直接そうやって言って貰えるとすげぇ安心するのな」
照れたように頬をポリポリと掻く。ルフィでも照れたりするのね。なんだかとても新鮮。
「あ!そういや俺ロビンに渡し忘れてたんだった。ほら、これ射的で取ったんだ」
ほと渡されたのは赤いリボンに包まれた薄紫色の小袋だった。何だろうと思い、リボンをほどいてみれば、そこにあったのは高価そうなネックレス。驚いてルフィを見ると
「その紫、ロビン好きそうだなって。中身までは分かってなかったんだが、おっちゃんから受け取ったときに教えてもらったんだ」
「でも私、そんな高価なネックレスなんて似合わないわ」
顔の火照りをルフィに知られたくなくてやっぱり俯く。
こんないかにも高価そうなネックレス、ナミにあげた方が喜んでくれるだろう。私なんかより、遥かに似合うだろう。それなのに、どうして私に?
「俺も今初めて見たんだけどよ、それお前に似合うと思うぞ。そこネックレスについてる石、えっと…、なんて言うんだ?シンピシテキ?んん?シンヒ、シン、シン……」
「神秘的?」
「そうだそれそれ!神秘的、なところとか雰囲気がロビンに似ててさ」
そうだろうか。まじまじとネックレスを見てみると、確かに私の好きな色だし、ルフィの言わんとしていることも分かる。でも、それでも私は信じられずにいた。何故私にくれるの?そんなの、私のことを特別に思ってくれているとしか思えないじゃない。特別な日でもないのにプレゼントなんてやめて。馬鹿で単純な私は都合よく勘違いしてしまう。
きっとあなたはナミのことが好き。そのネックレスもナミにあげれば良い。とても喜んでくれる筈よ。
あなたが私の隣で嬉しそうに、楽しそうに笑うたびに錯覚しそうになるの。私といるのが楽しいのかって。彼は仲間思いな船長だから、誰と一緒にいても同じ笑顔を見せる。私だけ特別なんてわけないじゃない。今回もきっと気まぐれに過ぎない。
「……ロビン?気に入らなかったか?」
黙りこんでしまったせいで、どうやら気に入らなかったものと思われたようだ。そのうえ、きっと無表情に近かったんだろうから、気づかってくれたんだろう。
「いえ、そういうわけではないのよ。とても嬉しいわ。……でも、私なんかよりもナミにあげた方が喜んでくれると思うの」
「何言ってんだロビン。俺はお前にあげたいと思ったからこうしてプレゼントしてんだ。なんでナミがここに出てくんだよ」
首をかくん、と傾げて問いかけてくる。何故この船長はそんなことをさらっと言えるんだ。自分でも頬がまた赤くなるのが分かる。
「……だ、だって、ルフィはナミが好きなんでしょう?」
「え、あぁ、…お、おう?」
頭に疑問符をたくさん並べているところを見ると、私の勝手な勘違いだった?いや、でも返事はYesだ。
「でも、……多分お前が思ってるのと少し違ぇよ。違ぇ意味の好きなら、……ロビンの方だ」
「……本当に?」
やけに真剣な目をしたルフィを疑いたくなってつい尋ねる。ルフィが、そんな嘘なんて吐くわけないというのに。
「なんで嘘吐かなきゃなんねぇんだ」
その一言で十分だった。でも心の中は何故という気持ちで一杯。
「俺はロビンが良いんだ。だから……、連れ去られたとき俺すっげぇ焦ったんだってさっき言った通りだ。本当にもう会えないんじゃないかって思って、「らしくないわよ?」
つらつらと謝りの言葉を並べるルフィの口を静かに塞ぐ。小さなリップ音と共に顔を遠ざけると、ルフィのなんとも言えない驚いた顔が目に入る。
「私はもうあの時からあなたのものよ、ルフィ。あなたの前から消えるなんて有り得ないわ」
驚いた顔が一瞬で嬉しそうな笑顔に変わる。
「そっか!なんか安心した」
じゃあ、と手を引っ張られる。
「みんなも待たせてるからな、行こう」
「ええ、そうね。……それと、これありがたく受けとっておくわ」
早速首につけたペンダントを持ってみせる。そ
れを見て、ルフィは満足そうに頷いた。

…あとがき…
やっと完結しましたー!!!半年までは行かないでもそれなりに長かったですね(白目)ていうか最終話までが時間かかった( ;∀;)とにもかくにも(強引に)ハッピーエンドで終われたので良かったですウヘヘ。ではでは次の作品で。
更新(27/04/08)


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