新婚ライフの裏側…苦悩編

 夜に眠る時はタブルベッドに二人一緒に眠る。恋人の寝顔が見れるこの状況は好きだ。
 だけど、困ることが一つだけある。それはスキンシップが好きな淳一が、横になるやぬいぐるみか抱き枕に抱きつくようにしがみついてくること。
 今日も風呂から出て髪を乾かした後、二人でベッドに入ると淳一はがしりと抱きついてきて胸に顔をすり付けてきた。可愛いのはいいがつい先月、お預けをくらった身としては色々と辛い。
 先月のある夜、初めて抱いた恋人の愛らしさに理性が飛んで、無理をさせてしまった。その結果、次の日に大学を半日休むこととなった。
 それから次の日に授業がある場合、夜は抱き締めるだけで意図的に手を動かそうものなら少しずつ距離を取られてしまう。自業自得なのは理解しているが、愛しい相手がこうも無防備だと体が勝手に反応するのは仕方がない。

「……淳一」
「……ん?」
「いや、……何でもない」

 眠そうに目を擦りながら返事を返す淳一に、大きく息を吐いて自分よりもいくらか細身な身体を抱き締めた。そうすると感じていた劣情が姿を潜める気がするからだ。
 そうやって平日をなんとかやり過ごし、休日の前夜には起き上がれなくなるまで付き合って貰うのはここ数週間恒例だ。

「……我慢、だ」
「……何か言った?」
「いや、明日も早いからな。おやすみ」
「ん、んー……おやすみなさい」

 安心しきったように目を瞑り、すぐに寝息をたてはじめた恋人に少しの意趣返しにと抱いた腕に力を込める。そうすると、何か寝言を呟きながら反抗するかのようにもぞもぞと動くが、次の瞬間には同じように強く抱き返されてしまった。
 起きているのかと顔を覗き込むけれど、目を覚ました気配はない。どうやら無意識の行動だったようだ。

 ――ああ、もう。お前には負ける。

 小さく呟いた言葉は、年下の恋人には届かずに消えた。


end

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