新婚ライフの裏側…料理編

※お隣のお姉さん視点


 マンションのお隣さんは茶髪の大学生の男の子と、私より少し上のサラリーマンの男性。二人は兄弟や親戚ではなく元々アパートが隣通しなだけだったらしい。仲が良くなってこのマンションに一緒に住むことになったのだと、ニコニコと笑いながら淳一くんが教えてくれた。
 私から見ても二人はとても仲がいいのだと思う。淳一くんは高崎さんが大好きだと言葉でも態度でも表しているし、高崎さんも言葉は少ないけれど視線がいつでも淳一くんに向かっている。
 多分、ではあるけれど、きっとこの二人は友情以上の感情を持っている、と思う今日この頃。

「……ええと、この後はどうしたらいいんですか?」
「お塩をちょっとだけ足して……ぱらぱらって」
「ぱらぱら……」

 煮立つお鍋の中に、淳一くんが慎重にお塩を加えて味を変える。緊張した面持ちで、一緒に書いたレシピノートとお鍋を交互に見ながら料理をする姿は、まるで旦那さんの為に料理を頑張る新妻さんのようだ。

「……ね、高崎さんはどんな味が好きなの?」
「え?」
「お料理を頑張ってるのって、高崎さんの為なんでしょ?」
「え?……っ、!?」

 私の言葉にきょとんとしたように首を傾げていたけれど、ふいに意味に気付いたのか顔を青ざめさせた。どうして、なんて目で見られても。

「……喜んでくれるといいわね」
「あ、あのっ」
「うん、お鍋の火が点けっぱなしだけど大丈夫かしら?」
「あ、え、ああっ!」

 空気の抜ける音をたてながら沸騰をはじめた湯に、慌てたようにわたわたと火を止めて中の具合を確認する。どうやらいい具合にそらすことができたらしい。
 私は男同士だろうと別に偏見はないから、怯えた表情をしなくてもいいのに。突然すぎたのかしら?首を傾げながら、無事だったらしいお鍋に安堵している淳一くんを眺めた。

「……木更津さん」
「なぁに?」
「……」

 順調に作り終わって、一息ついた頃になるとそわそわとした態度で私を伺うように見てくる。さっきのことを思い出したらしい。

「あの……また、教えてくれますか?」
「ええ、もちろん。可愛い淳一くんの頼みだもの」

 恐る恐るといったように尋ねてくる彼に、少しだけ苦笑して頷く。
 幸せそうな彼らを見るのが、今の私の日課。それがなくなってしまうのは、少し寂しい。何より初々しい二人を見ていると、まるで自分のことのように心が穏やかになるのだ。
 よかった、と安心したように嬉しそうに笑う淳一くんに、にこりと笑みを返した。

end
(次はお弁当にいれられるものにしましょうか)(卵焼きとかですか?)(ふふ、卵焼きは愛妻弁当の定番よね)(あ、いさいっ!?)

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