*'11 神楽誕!*




*キミにkissを*



──ねぇ、ホントに私のこと好き?


 明けて、翌日。私の誕生日当日になったというのに、昨日のケンカ別れ以降、総悟が顔を見せることはなかった。携帯だってあるんだから、電話でだって声を聞けるというのに。メールで何かしらやり取りすることだって可能なハズなのに。──それすらもないだなんて、総悟は呆れてしまったんだろうか。それとも怒ってるんだろうか。
 結局、あまり眠れないまま朝を迎えてしまい。うとうとし始めた頃に、ちょうど朝ご飯を作りに来た新八の声がして更に眠れなくなってしまった。

「最悪の気分アル。全く清々しくないアル」
「ど、どうしたの? 神楽ちゃん、クマが出来てるけど」
「ぜんっぜん眠れなかったアル。その上、新八がムダに明るく挨拶なんかして入ってきたから益々眠れなくなったアル」

 清々しい朝ですね、なんて鼻歌混じりにやって来た男を恨めがましく睨んでやると、バツの悪そうな顔をして再び朝食作りを始めてしまった。

「寝不足のところ悪いんだけどさ、銀さん起こしてきてくれるかな?」
「知らねーヨ。天パが起きようが起きまいが、私の睡眠不足は解消されないネ! ──気分転換に、今のうち定春の散歩に行ってくるアル。銀ちゃんは自分で起こせヨ」

 まだ惰眠を貪っていたはずの定春だったが、散歩、の声が聞こえたのかいつの間にやら玄関先まで出て来ていて。

「朝ご飯は帰って来たら食べるから取っておけヨ!」

 言い捨てると、定春にリードを括り付け、昨日総悟とケンカ別れした公園へと走り出したのだった。



「あれー? チャイナさんじゃないですか。朝早くから珍しいですね」
「……何で地味なヤツらは朝からムダにテンション高いアルか」

 総悟と同じ黒の隊服(コッチは隊長服ではないが)を視界に捉え、深く長い溜め息をついた。

「地味なヤツらって何ですか、ソレ。もしかして新八くんも入ってます? 何か、チャイナさんの方は朝からテンション低すぎですね……って、そういえば今日、誕生日じゃなかった? 昨日沖田隊長がボヤいてたような」
「っ! そ、総悟が何か言ってたアルか!?」
「えぇっ!? いや、あの、隊長……昨日の夕方から夜警に回ってんですけど、チャイナさんの誕生日明日なのにもう面倒くせー(仕事すんのが)とか何とか。そろそろ仕事終わる頃だとは思うんだけど」

 面倒くさいって? 彼女の誕生日なのに? ──あんの腐れドSがぁっ!!

「ジミー! 定春は任せたアル!」
「はぁっ!? えっ、ちょっ、チャイナさん!? 俺じゃあ、定春くんは連れて帰れませんよー!!」
「大丈夫ヨ。ジミーはやれば出来る子アル。定春も、私の一大事なら空気読んでくれるハズだから問題ないネ!」
「いや、問題大有りですよ〜っ。既に俺、引きずられてますって!」

 叫ぶジミーはこの際捨て置いて。屯所までの道を全速力で駆け抜けていく。

「門は閉まってるから……」

 裏通りに回り、高い塀をひとっ飛びで乗り越える。裏庭に面した縁側から、局長やら隊長格の部屋が並んでいるのが見えた。
 その中に総悟の部屋があるのを確認すると、傘を差したまま庭にヒラリと降り立つ。ここに来たのも、初めて通された総悟の誕生日以来。トッシーにバレたら喧しいとか言って、あの一度きりで屯所を訪れることすら許してくれなかった。自分は結構平気で万事屋に上がり込んで来るクセに。

「あ……でも、いっつも銀ちゃんがいる時しか来ないネ」

 こうして考えてみれば、公園で会うことや駄菓子屋巡りみたいなデートっぽいことを除いては純粋な2人きり、にはなったことがないと思い至った。
 もしかして、意図的にそうしてる──? キス、だなんてそもそも出来る雰囲気になかったのだ。この4ヶ月、総悟は私を甘やかしてたように思ってたけど……ちょっと考えてみたら、ホントはもう好きじゃなくなったとか? 私は、色気なんて間違ってもある方じゃない。総悟だって20歳の健康な男なんだから、例え私を好きだとしても身体だけは他の女がいいとか?
 そんな負の連鎖を辿り始めた思考を、頭をブンブン振って吹き飛ばした。こんなんじゃダメだ。私はウジウジ悩むようなタマじゃないんだから!

「よしっ。ひとまず乗り込んでやるアル!」

 障子に手を掛けると、無言のままスパンと勢いよく開き室内を見回す。

「……何やってんだ、てめーは」

 そこには、着替えの途中だったのか、上半身裸で下もベルトを外した状態の総悟が立っていて。──うわっ。妙に色気があるんだけど!?

「勝手に屯所に上がり込んで、声も掛けずに男の部屋に襲撃かよ? いくら誕生日だからって自由すぎだろ、チャイナ」
「うっ、だって、昨日あんな……ヤな別れ方しちゃったから」
「夜警だったのは聞いたんだろィ? 悪ィが、ホントに何の準備もしてねーからな。物はいらねェっつーから、どっか高い店にでも食いに連れていこうかとも思ったが……てめーなら質より量だろうしな」

 あー、やっぱり私には色気より食い気なんだ。今までそうやって気にせずに来たから、仕方のないことではあるのだけど。

「モノもいらないし、食べに連れてってくれなくてもいいアル」
「何でィ、まだ怒ってんのかよ?」
「そうじゃなくって!」

 言い返した勢いで上半身裸のままの総悟に接近し、視界が肌色で覆われる。当然免疫のない私は、みるみる赤面していった。

「あー、悪ィ。さすがに寒いから着物着させてもらうわ」
「えっ!? ど、どーぞ!」

 寝間着にしているらしい着物を羽織る総悟をジーッと見ていると、何見てんだスケベ、などと笑われてしまって。

「だって……総悟の方が私より色気あって悔しいのヨ」
「はぁっ!?」

 思いもしないことを言われたのだろう。心底驚いた顔で、総悟は私を見下ろしていた。

「私に色気がないから、触る気も起きないんダロ? 私が子供すぎるから……」
「チャイナ、いや──神楽」
「は、ハイッ!?」

 真剣な顔つきになった総悟に、久しぶりに名前で呼ばれたことで。倍に衝撃を受けてアタフタしてしまう。

「神楽は俺ん中じゃ、いつだって女だ」
「え……?」
「誰が色気ねェって言った? 俺ァ、常にお前にムラムラしてたんだけど」
「……な、何アルか、ソレ〜っ!?」

 真顔でムラムラ、って。いやいや、そんなことよりも総悟が私のことを、そんな目で見てくれてただなんて!

「微塵もそんな素振り見せたことないネ! それでも信じろ、言うアルか!?」
「隠してたに決まってんだろ。さすがにムラムラ垂れ流しじゃ、近藤さんレベルになっちまわァ」

 隠してた、って。それでも、だからって。いや、うん、そうじゃなくて。

「2人っきりになんの、避けてたんじゃないアルか?」
「何でィ、やっと気づいたのかよ」
「へっ?」

 総悟は軽く溜め息をつくと、両手で私の頬に優しく触れた。……ドキッとする間もなく、総悟の端正な顔が至近距離まで一気にやって来て。

「そっ、そーご!?」
「2人っきりになんかなっちまったら、もう抑えなんか効かなくなるんでィ。ちなみに、今、理性崩壊まで残り10秒ぐれェだからな。嫌なら逃げなせェ」
「はぁっ!?」

 頬に触れていた手が片方だけ後頭部に回り、残った左手が顎に下りて──。


 噛みつくような激しいキスが、それから暫くの間、繰り返されたのだった________



訂正箇所チェックとか、文章以外の更新作業に手間取って。出来てたのになかなかup出来ませんでした(^-^;
総悟の色気具合は、バカイザーをご参照下さいませ(笑)つーか、本誌の金さんがぶっちゃけバカイザーに見えry
 何でもありません!(°∇°;)
予定通り、次回で完結しますので。もう少しおつき合い下さいねー!!

'11/11/08 written * '11/11/10 up

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