05

住み込みで働くということで、家の大家さんに事情を話し、自分の荷物を持って新選組屯所に訪れた。……途中、お菊さんの私物を燃やすのを忘れずに。新選組に着くと、つい先程までは居なかった人達がたくさん居た。当然だが、全員新選組の隊士のようだ。
近藤さんに連れてこられた部屋には、何人かの男性が居た。部屋に入った瞬間、私達に視線が集まり、体が縮まる。やっぱり、人斬り集団は怖い。近藤さんは至って普通の態度で部屋に入ると、その部屋に居る全員の前に胡坐をかいて座る。



「さ、此処に座ってくれ」



ポンポン、と自分の隣を叩く近藤さん。怖い視線から逃げるように、小走りで近藤さんの元に行き、隣に座る。視線が全て私に来ていることに気づき、思わず視線が落ち、手に力が入ってしまう。「近藤さん、その子どうしたんだよ?」と聞く歳が近いであろう男の子の言葉に、近藤さんは嬉しそうに「聞いて驚け〜!」とニカッと笑いながら言う。



「今日から住み込みで洗濯、掃除を手伝ってくれることになった橘伊織君だ。皆、仲良くするようにな」



彼の言葉に、全員が「はあっ!?」と驚きの声を上げる。その声の大きさに、ビクッと肩を震わせると、近くにいた赤い髪の男性が「あ、悪い」と苦笑して謝ってくれた。「い、いえ」と慌てて返事をする。そんな時、「こんな子供を住ませるのか?」と、髪をひとつにまとめた男性が私を睨みつけて近藤さんに聞いた。
……歓迎、されてない……。
視線を落とす私とは正反対に、近藤さんはしっかりと「ああ」と頷く。その返答が気に入らないのか、髪をひとつにまとめた男性の眉間の皺が、更に深くなった。



「でもよ土方さん、実際俺達じゃ洗濯も掃除も満足に出来てないだろ? 良い機会だし、やってもらえば良いじゃねえか」



先程の歳の近そうな男性が、助け船を出してくれる。その言葉は本当のようで、”土方さん”と呼ばれた髪をひとつにまとめた男性は、何も言えなくなったのか口をつぐんだ。近藤さんはそれで決まりだと思ったのか、私に顔を向けて「皆に自己紹介を」と言った。こんな状況で言わなければいけないなんて、本当は気が進まないけど、近藤さんに言われてしまったのなら仕方ない。



「橘、伊織と申します……」



弱々しくながらもそう言って頭を下げる。頭を上げても、私への警戒心が薄れないようで、まだ私に鋭い視線が向けられていた。
――それと同時に、冷たい変な邪気も。
その変な邪気は、黒紫色の髪をした男性の背後から感じた。恐る恐るその男性を見ると、男性も私を見ていたようで、バチッ、と目があった。その瞬間、瞬時に目をそらした私。男性の背後から見えた妖……、ばっちり見えた。まだ見たことのない妖だ。でも、何度か妖に噂で聞いたことがある。
名を、ヒノエ。
呪術の知識が豊富だという。最悪だ……、まさかこんな所で妖に会ってしまうだなんて……。


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