変魂if | ナノ

『ゾンビ編 2/4』


パァンッパァンッパァンッ
「っ、はっ……!」



睡眠針が強力なおかげか、一発当てただけでも眠ってくれる。しかし、数が多いせいか私も流石に疲れてきた。休憩したいときは睡眠弾を投げているし、この本部にいる半分以上の人数は眠らせてきたけれど、まだまだ残っている。これじゃきりがない……。



ドオオオンッ



この辺りを一掃した時、下の階から凄い音が聞こえてきた。まさかソカロ元帥が出てきたのではないだろうか。神田達がゾンビになったら、いよいよ私がゾンビになる確率がどんと増す。それは阻止しないといけない。慌てて階段へと全速力で走り出す。休憩したいだなんて言ってられない状況になってしまった。
何段か飛ばしながらも順調に早く階段を降りて行く。階段を降り切り、何かが壊れる音や、金属がぶつかり合う音が聞こえてくる方に向かう。早く、早く。焦る気持ちをなんとか抑えつつ走っていると、ゾンビの大群と出くわした。その隙間から、傷を負いながらもまだゾンビになっていない神田達の姿が見えた。ああ、良かった。



「息を止めろッ!」



あんなゾンビの大群、一人一人眠らせて行ったら神田達がゾンビになってしまう。そう思い、私にしては珍しく大声で神田達に言い、睡眠弾をゾンビの大群に向けて投げる。ボワンッ、と変な音を立て、睡眠弾の中から煙が一気に溢れ出す。次々とゾンビが倒れ行く中、煙が届かなくて立っているゾンビ達に向け、ハンドガンの睡眠針を撃っていく。



パァンッ



立っている最後の一人を撃ち、段々と晴れて行く煙の中に突っ込む。勿論、息を止めて。神田達の元に辿り着くと、その場にいた神田、ジョニーさん、ウォーカー、ラビの四人が驚愕の表情で私の顔を見た。完全に煙が晴れ、神田が口を開く。



「お前、無事だったのか」
「これのおかげでね」



ヒラヒラと手に持っているハンドガンを見せる。



「つか、え!? 撃ってたけど皆大丈夫なんか!?」
「ただの睡眠針。命に別状はない」
「そ、そっか。良かった」



ホッと胸を撫で下ろすラビ。けれど、まだまだゾンビは残っている。遠くから迫ってくるゾンビに「どうしよう……」と思いつつ、とりあえずハンドガンを構える。此処から一番近いゾンビに銃口を向け、パァンッ、と一発撃つ。しかし、その弾はゾンビの横をすり抜け、後ろのゾンビに当たった。そのゾンビはフラフラしながらも倒れる。



「……今狙ってた奴と違う奴に当たったろ」
「お黙り」



余計なこと言いやがって、神田め。思わずギロッと睨むけれど、睨み返されてしまった。神田の睨み怖い。さあ次の標的は誰だ、とゾンビ達に銃口を向ける。が、



「お前等ッ!」



後ろから声が聞こえた。神田達と揃って後ろを振り返ると、そこには縄で縛られたコムイさん、リーバーさん、ロブさん、縛られていないリナリーが居た。リナリーは「ヒッヒッヒッヒッ」とらしくない笑い方をしている。そんなリナリーに、コムイさんがいち早く「リナリーの姿で下品な笑い方をするなぁああ!」と泣き喚く。



「良かった、無事だったんだな!」



リーバーさんが嬉しそうに笑みを浮かべながら私達に言う。様子のおかしいリナリーに疑問を持ったのだろう、ウォーカーが困惑した表情で「これは……?」と聞く。そんな中でもゾンビは迫ってくるだろうと思いだし、ゾンビ達に視線を向ける。しかし、ピタッと立ち止まっていた。



「リナリーにオバケがとり憑いちまったんだ」
「リナリーに!?」



リーバーさんとウォーカーの会話を聞き、再びリナリー達に視線を向ける。オバケに憑かれたリナリーが来たから、ゾンビ達は止まって様子を伺っているのだろう。だとしたら、リナリーが指示を出さない限りゾンビ達は動かない。と、その時、上の方で黒い何かが動いた気がした。ハッとしてコムイさんに避けるように言おうとするけれど、それより先にその黒い何かがコムイさんに襲い掛かる。



「ガァアア!」



それはコムイさんに噛みつこうと牙を向けるが、「ヤメローッ! ゴ主人ハ守ルノヨーッ!」という声と共に、何処かに吹っ飛ばされた。それと同時に、コムイさんが「コムリンEXゥー!」と感涙する。どうやらコムイさんを助けたのはコムリンEXだったようだ。



「ゴ主人、感染源コイツヨ!」
「なにっ、感染源!?」



そして、その黒い何かとは、クロウリーさんのことであった。クロウリーさんは自我を失い、覆いかぶさるコムリンEXを退けようともがいている。コムリンEXがクロウリーさんの腕に噛みつくと、クロウリーさんがコムリンEXの体を天井にのめり込ませるぐらいに殴り上げた。



「マズイッ……!」



ジョニーさんが言うのと同時に、コムイさんの体がリナリーに押さえつけられた。動かせないように、クロウリーさんがコムイさんを威嚇する。すぐに銃を構えてクロウリーさんに銃口を向ける。



「動ぐなッ! 動いたら噛まぜるぞ!」



しかし、リナリーのその言葉に戸惑い、引き金が引けない。



「わだしを置いでいごうとするおまえ゛らがわるいんだよ! コムビタンで死ぬまでわだしど暮らすんだっ……!」



リナリーはそう言うと、押さえつけていたコムイさんの頭を更に押さえる。咄嗟にラビが「やめろ!」と言うが、憑かれたリナリーは愉快そうに笑いだけ。もうこうなったらクロウリーさんに向けて睡眠針を撃つしかない。ぐぐ、と引き金に力を入れる。



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