04

二十代前半、彼氏無しの独身。
そないなうちは今、五歳の男の子と同居しとる。
名前を、三郎。
ほんまはうちの従姉の子供やねんけど、従姉夫婦が事故死して以来、引き取り手が見つからずうちが面倒を見とる。
で、更に、三郎は双子の兄で、弟の方は別の人に引き取られた。
彼氏もおらへん働き始めたうちが二人も子供を見れるはずがあらへん、って、無責任や、って言われた為や。
本音を言うと、三郎と弟を引き離したくはなかったんやけど。



「やっぱし休日は人が多いなあ」



土曜日。
食料が無いことに気づいたうちは、三郎と一緒にスーパーに訪れた。
休日のせいか、平日より人が多い。



「ええか、三郎。離れたらアカンで」
「……おかし」
「ん?」
「……おかし、たべる」



やっと喋ったと思ったらそれかいな。



「アカン。まずは今日の夕飯に使う食材や」



うちの言葉を聞き、三郎がムスッと不機嫌さをあらわした。
三郎は人込みが苦手らしいし、不機嫌なんは人の多さとお菓子優先ではないからやろう。
せやけど、食材は譲れん。



「……らいぞー、げんきかな……」
「また雷蔵君か。三郎、相当雷蔵君が好きやねんな」
「だっておとうとだし。ふたごだし」
「……近親相姦とかホモはやめといてな」



ボソッ、と呟くうち。
ちょっと聞こえたのか分からんが、三郎がうちを見上げて首を傾げた。
三郎に顔を向けると、プイッ、と顔を逸らされてしもた。
ちくしょう。




 ***




食材を籠に入れ終え、お菓子コーナーに来た。
三郎はすぐにうちの元から離れ、棚にあるお菓子をじっと見て行く。
毎度大人しくて妙にクールやけど、こういう時は子供っぽいなあ、と感じてしまう。
心なしか、お菓子を眺めとる三郎の目が輝いとるように見える。
……ほんまは雷蔵君と一緒に食べたかったやろうに。



「かあさん、これ」



ボーッってしとったら、三郎がお菓子を持ってきよった。
手に持っとるんは、有名なポテトチップスのしお味。
それを籠の中に「よいしょ」と入れる三郎。



「これだけでええの?」



うちの言葉に、三郎はうちをジッと見る。
かと思えば、再びお菓子を眺めに行ってしもうた。
ちーと待っていると、三郎が両腕いっぱいにお菓子を持って戻ってきよった。



「これとこれ。これも」
「え、ちょ、」
「あとこれ。それからこれも」
「ちょ、三郎さん……?」
「あとはー…、これ」



なんやこの状況。
三郎が次々にお菓子を籠に入れていく。
二個や三個どころとちゃう。
これは、うちが思うには十を超えとるやろ。



「ちょ、ちょお待って。お菓子、こないに買えへんよ」
「”これだけでええの”ってきいたの、かあさんでしょ?」
「限度超えとるやろ!」



うちがツッコミをすると、三郎が再びムスッとしてしもうた。
あー、アカン。
子供の扱い、ごっつ難しい。
つーか、三郎が普通の子供よりわがまま。



「うち、そないにお金あらへんよ?」
「かうの。……らいぞーといっしょにたべるんだもん」



そう言い、ほっぺを膨らませて俯く三郎。
……ほんま、弟思いのええお兄ちゃんやな。



「……しゃーない。今回だけやからな」
「っ! ほんと……?」
「おん」



買ってもええことを伝えると、三郎は嬉しそうな表情をした。
笑顔やのうて無表情やけど。
三郎の表情を変えれるんは、雷蔵君だけやな。



(ほな、今度雷蔵君の家に行こうな。 by.母)
(うんっ。 by.三郎)

 
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